UPDATE3: 米MRIインターナショナルの登録取消、投資資金を配当に流用=金融庁

*詳細を追加しました。
 [東京 26日 ロイター] 証券取引等監視委員会は26日、米国での事業に関連したファンド持ち分を日本で販売していた米MRIインターナショナル(本社:米ネバダ州)が、顧客から集めた資金を本業に用いず他の顧客への配当金・償還金の支払いに流用したり、虚偽の事業報告書を提出するなど金融商品取引法に違反したとして、行政処分するよう金融庁に勧告したと発表した。投資資金の一部が消失していたとみられる。監視委は同日、MRI社への強制調査にも着手。金融庁は、同社の金融商品取引業者の登録を取り消し、業務改善命令を出したと発表した。
 MRI社が2013年版のパンフレットなど顧客勧誘資料を作成し、新たに多数の顧客を勧誘する計画を進めていたことから、監視委は緊急に是正する必要があると判断し勧告した。金融庁は、監視委の勧告を踏まえて同日、同社の登録を取り消し、会社財産を不当に費消しないことや顧客への財産返還を速やかに実施することなどを命じる業務改善命令も出した。
 監視委は、事実に著しく相違したり誤認される広告を行う金融商品取引法違反があったとして、米本社と日本支店(東京・千代田区)を嫌疑法人、エドウィン・ヨシヒロ・フジナガ代表取締役を嫌疑者とした強制調査にも着手した。今後も全容解明を目指し、必要があれば刑事告発もする構え。
 同社は、米国での診療報酬請求債権(MARS)の購入と回収事業に出資して得られる利益の一部を配当として受け取れる権利(ファンド持ち分)を日本で販売していた。この際、固定年利6.0─8.5%の高い利回りが得られると宣伝。同社のホームページによると、2012年12月末の顧客数は約8700人、預り資産は1365億円に上る。ただ、金融庁幹部は「同社の公表数値にどの程度の信頼性があるかはわからない」と話している。
 監視委の調査で、同社では分別管理が適切に行われておらず、少なくとも2011年以降、顧客からの出資金を他の顧客に対する配当金や償還金に流用していたことが判明。さらに、支払い遅延が生じているにもかかわらず、信託口座の状況を顧客に適切に説明せず勧誘を継続しており、顧客に対して出資金の使途や配当金の支払いについて虚偽の告知をしていた。
 このほか、当局が同社に対して報告徴求命令を出した際、第三者機関と共同して信託口座の内部査定を実施したと回答しながら、その事実は認められなかった。
 MRI社をめぐっては昨年12月、投資家から配当償還が遅延しているとの情報が寄せられ、今年3月4日、検査が開始。監視委は、今回の検査において米証券取引委員会(SEC)の協力を得たとしている。MRI社は顧客からの資金の振り込みや顧客への配当金などの支払いを直接、米国の口座を通じて実施していたため、情報が分散しており全容の把握は難航するとみられる。
 金商業者や運用業者による顧客資産の消失事例としては、AIJ投資顧問が虚偽の運用実績を示して企業年金から受託した資産の大半を失った事件が昨年、発覚していた。勧誘時に虚偽の説明をするなど、今回の事案と似た面もあるが、MRI社の場合、主な顧客は富裕層の個人投資家だったもよう。
 金融取引をめぐる信頼回復に向けては、検査・監督体制の拡充の是非が改めて関心を集めそうだ。MRI社は日本で2008年、第二種金融商品取引業者の登録をしたが、当局が検査に乗り出したのは今回が初めて。MRI社と同様の登録をしている業者だけで1300社近くあり、当局の陣容は追い付いていない面がある。
 <投資家は「商品の流動性・透明性を確認する必要」>
 このところ日本の株価は回復し資産運用の環境は改善しているが、依然として超低金利は続いているため、株式投資ほど変動リスクを取りたくない投資家の固定金利商品に対する需要は高い。
 今回のような事例についてBFCアセットマネジメントの川名教之会長は「投資家は株式との相関性が低い商品を好んで買う傾向がある。そこで利回りが6─8%だと魅力的に映る」と指摘。
 また、「このような商品は時価評価をするのが非常に難しいため、投資家は商品の流動性や透明性を目論見書などを見て確認する必要がある」と警鐘を鳴らしている。
  (ロイターニュース 平田紀之、程近文、江本恵美;編集 田中志保)

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