WTO加盟14の国と地域 ロシアの「最恵国待遇」取り消しへ

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアを、貿易の面で世界経済から締め出そうという動きが広がりを見せています。WTO=世界貿易機関に加盟する日本やアメリカ、それにオーストラリアや韓国など14の国と地域が「最恵国待遇」と呼ばれる貿易上の優遇措置の取り消しなどを行う方針を明らかにしました。

日本やアメリカ、EU=ヨーロッパ連合、それにオーストラリアや韓国など、WTOに加盟する合わせて14の国と地域は15日、声明を発表し、この中で、ウクライナに侵攻したロシアの行動は、重大な国際法違反で、国際機関を尊重しているのか甚だ疑わしいとロシアを強く非難しました。

そのうえで、WTO加盟国として安全保障上の利益を守るため、ロシアに対する最恵国待遇の取り消しを含むあらゆる措置をとるとしています。

最恵国待遇は、関税などでいずれかの国に与える最も有利な待遇をほかのすべての加盟国にも与えなければならないというWTOの協定の基本原則の1つです。

今回の声明は、11日のG7=主要7か国の発表に続くもので、貿易の面でロシアを世界経済から締め出そうという動きが広がりを見せています。

また声明は、ロシアを支持しているベラルーシについても、WTOへの加盟にかかわるあらゆる手続きに参加しないと表明しています。

「最恵国待遇」とは

「最恵国待遇」とは、WTO=世界貿易機関の協定の基本原則の1つです。

関税などでいずれかの国に与える最も有利な待遇をほかのすべての加盟国にも与えなければならないというルールです。

例えば、WTO加盟国のA国がB国との間で、ある製品の関税率を5%とすると約束した場合、ほかのすべての加盟国との間でも同じように5%の関税率を適用しなければならないというものです。

「最恵国待遇」の考え方は歴史が古く、多くの2国間の通商条約に取り入れられてきました。

しかし、世界恐慌の影響を受けてイギリス連邦が行った貿易制限措置「スターリング・ブロック」など「最恵国待遇」を制限する制度が相次いで導入されました。

こうして経済のブロック化が進んだことが第2次世界大戦の要因の1つになったとされています。

こうしたことの反省から戦後に誕生したWTOの前身、GATT=「関税および貿易に関する一般協定」では最恵国待遇の規定が盛り込まれ、特に順守されなければならないルールと位置づけられました。

この規定はWTOにも引き継がれています。

今回、G7各国がロシアの最恵国待遇を取り消すよう努めるなどとしていることは自由貿易体制の安定化の礎となるルールを特定の国に対して除外することを意味し、異例の厳しい警告とみられています。