さようなら「20年の殿堂」 HMV渋谷が閉店
CD販売店のHMV渋谷(東京・渋谷)が22日閉店した。1990年代に若者向け音楽の発信地として人気を集めたが、最近はインターネットによる音楽配信などに押されて売り上げが落ち込んでいたもよう。CD退潮の象徴といえそうだ。
同日は深夜11時ごろまで無料のライブイベントが開かれ、多くの音楽ファンが詰めかけた。横浜市在住の男性(43)は「若いときから通算して、この店だけで1000枚以上のCDを買った」と感慨深げだった。
イベントや試聴コーナーが充実していたのも同店の特徴のひとつ。川崎市在住の男性(43)は「イベントコーナーでお薦めのCDをよく買っていた。店がなくなってしまうのは残念」と惜しんでいた。
一方でネットの利用とともに足が遠のいていた人も目立った。千葉県市川市から来たという女性(28)は「10年前はCDは100%店で買っていたが、最近は半分が(ネット販売の)アマゾン・ドット・コム、半分が店」と語った。
東京・五反田に住む女性(39)は「2年前に(高機能携帯電話の)iPhone(アイフォーン)を買ってから、音楽配信の利用が増えてきた。いまはCDが7割、音楽配信が3割を占める」と話していた。
HMV渋谷は英HMVの日本進出1号店として90年にオープンした。小沢健二、小山田圭吾といったミュージシャンを積極的に紹介したことから、"渋谷系音楽"という言葉まで生まれた。
現在の運営会社は大和証券系の投資ファンド傘下にあるHMVジャパン(東京・港)。渋谷は売り場面積が約2000平方メートルと同社で最大だった。渋谷の閉店で国内の店舗は47になる。同社は今後も不採算店の閉鎖を進め、ネットによるCD販売に事業の軸足を移していくとみられる。
HMVジャパンを巡っては、今年春にカルチュア・コンビニエンス・クラブがいったん買収に名乗りを上げたが、6月になって撤回した経緯がある。
日本レコード協会によれば、国内の音楽CDの2009年の生産額は2460億円で10年前のほぼ半分。音楽配信の拡大と無料メディアの台頭で減少が続いている。