銀座線の「レール幅」はなぜ新幹線と同じなのか 「軌間」には鉄道発展の歴史が詰まっている

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「日本の地下鉄の父」と呼ばれる早川徳次はイギリスを視察し、日本でも今後は地下鉄が必要になることを実感した。そして「東京地下鉄道」を設立、開業にこぎつけた。東京地下鉄道は、当時の私鉄に関する法律「地方鉄道法」に基づいて開業したが、この法律では狭軌を基本としつつ、1435mm軌間も認められた。

だが、鉄道省が積極的に標準軌の採用を指示したというのは、不思議ではある。

実は、日本の鉄道を狭軌から当時「広軌」と呼ばれた1435mmへ改軌するかどうかという問題は、何度も政治的な論争の火種となっていた。広軌論者の主張は、軌間が広ければ輸送力が増えるというものだ。また、一般的には軌間が広いほうが走行時の安定性も高いといえる。

1914年の第2次大隈重信内閣では、改軌するかどうかの調査・検討作業に入っていた。が、内閣退陣により中断する。その後の寺内正毅内閣では、1435mm軌間の南満州鉄道(満鉄)の初代総裁を務めた広軌論者の後藤新平が内務大臣に就任し、広軌化計画を推進した。

結果的に改軌計画は消滅したものの、そのころの論争を知っていた人々が鉄道省におり、その経験から今後の展開も考え広軌にすべき、と考えたという見方もできる。

また、早川徳次は早稲田大学在学中に後藤新平の書生となり、卒業後は後藤が総裁を務める満鉄に入社、さらに後藤が鉄道院総裁に就任すると鉄道院へ転じるなど、後藤の影響が強い。広軌論者に転じた大隈重信の影響も受けていたため、1435mmを選んだと考えることもできるだろう。

1435mm軌間はその後「弾丸列車」計画で採用され、のちの新幹線へとつながっていった。

「第三軌条」は関係ある?

第三軌条方式の銀座線は架線がないため、トンネルの天井が低い(撮影:尾形文繁)

銀座線は、架線とパンタグラフを使わず、2本のレールの横に電気を流すレールを設置し、そこに台車に設置した「集電靴」を接触させて走行に必要な電気を集める「第三軌条方式」の地下鉄である。架線を設置するスペースが必要ないため、トンネルの断面を小さくすることができる。

第三軌条方式の地下鉄は、日本国内では銀座線のほか丸ノ内線、横浜市営地下鉄、堺筋線・長堀鶴見緑地線・今里筋線を除く大阪メトロ各線があり、すべて標準軌だ。

第三軌条は一般的に車体よりも外側にあたる位置に設置している。レールの幅を広くすることで第三軌条と台車が近くなり、集電に有利とも考えられる。ただ、狭軌でも第三軌条方式は存在し、国内でもかつて信越本線の横川―軽井沢間で採用例があった。

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