産経WEST

【関西の議論】放置される「勝手踏切」、危険なのに閉鎖できず正式踏切にも昇格できない理由…あの「江ノ電」は全区間10kmに100カ所超も

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【関西の議論】
放置される「勝手踏切」、危険なのに閉鎖できず正式踏切にも昇格できない理由…あの「江ノ電」は全区間10kmに100カ所超も

 踏切のようで踏切でない。遮断機も警報器もなければ、踏み板すらなく、住民らが線路の敷石に足を取られながらも恐る恐る横断する。これは「勝手踏切」と呼ばれる“非正規の踏切”だ。文字通り住民が勝手につくった踏切もあるが、京都府宇治市にあるJR奈良線の「勝手踏切」は少し“勝手”が違う。「鉄道ができる前からあった生活道路」(地元住民)だからだ。JR西日本は踏切を閉鎖したい意向だが、住民は「生活道路を閉鎖されては困る」と存続を要望。警報器や遮断機の設置を望んでいるが、「勝手踏切」は放置されたまま。正規の踏切に昇格させることも難しいのが現状という。「勝手踏切」はなぜ放置されてきたのか。(大竹直樹)

“赤信号”なら横断

 《渡る前 よく確かめよう みぎ・ひだり》

 《危険!! 自転車・手押し車での横断は禁止です》

 細い路地の先に立ちはだかるフェンスに、こんな文言が書かれた看板がいくつも並ぶ。京都府宇治市五ケ庄のJR奈良線にある「勝手踏切」。フェンスに近づくと、人一人がやっと通り抜けられる隙間があった。

 警報器や遮断機がない踏切はある。「第4種踏切」と呼ばれる。だが、「勝手踏切」には線路を渡るための踏み板もない。敷石(バラスト)の上に枕木があり、2本のレールが横たわるだけ。線路そのものだ。

 線路の手前で左右をよく見渡すと、京都寄りの線路はカーブになっていて見通しはよくなかった。

 「気づいたら電車がすぐそこまで来ていたこともありました。今は電車の信号機を見て、左右両方とも赤だったら渡っています」

 幼少のころから勝手踏切を利用しているという菅野愛子さん(34)が、渡り方の“コツ”を教えてくれた。JR奈良線は単線。上りと下り双方の信号機が「赤」なら電車は来ないというわけだ。

横断は“黙認”状態

 ここを横断してみると、こんな看板があった。

 《この箇所で平成25年2月11日に死亡事故が発生しました。線路への立入りは大変危険です。渡らないでください》

「産経WEST」のランキング