2023.04.21
# 音楽

天皇陛下も聴き入った柏原芳恵の名曲『春なのに』に、中島みゆきが込めた「思い」

「17歳に戻って作った」

春は出会い、そして別れの季節。片思いのあの人に伝えられなかった胸の内—等身大の切なさが、誰の心にも刺さった。

前編記事『柏原芳恵が語った、『春なのに』を初めて聞いた瞬間「ほろっときた一節」』に続き、不朽の卒業ソングの「誕生秘話」に迫る。

柏原芳恵(かしわばら・よしえ)/大阪府生まれ。'80年のデビュー後、『ハロー・グッバイ』『春なのに』など数多くのヒット曲をリリースし、トップアイドルの座を獲得。現在、MCを務める「柏原芳恵の喫茶☆歌謡界」が「J:テレ」で毎週土曜22時より放送中

市川武(いちかわ・たけし)/'45年、東京都生まれ。'65年、キングレコード入社を経て、日本フォノグラムでディレクター、プロデューサーを務めた。柏原芳恵『春なのに』を担当

鈴木啓之(すずき・ひろゆき)/'65年、東京都生まれ。テレビ番組制作会社勤務後、中古レコード店経営を経て、ライターに。昭和歌謡曲のCD、DVDの監修・解説などを手がける
『春なのに』/'83年1月11日にリリースされた、柏原芳恵の12枚目のシングル曲。第25回日本レコード大賞・金賞を受賞したほか、同曲で柏原はNHK紅白歌合戦初出場を果たす。現在も卒業ソングの定番として知られる

中島みゆきの「言葉」

市川 当時は3ヵ月に1枚シングルを出すのは当たり前で、しかもアルバム制作も同時並行で進めていたんです。そんなタイトなスケジュールの中、みゆきさんにはレコーディングにも立ち会っていただきました。

柏原 早めにスタジオに入って、歌の練習をしていたんです。事前に挨拶を考えていたんですが、みゆきさんを前にして、頭が真っ白になってしまって。けれども「高い声が出るんですネ」と、ラジオで聴くような明るさで話しかけてくれて、緊張がほぐれました。

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鈴木 何かみゆきさんからアドバイスはあったのですか?

柏原 歌い方などの具体的なアドバイスはありません。でも、「芳恵ちゃんに歌っていただく曲は、私自身も17歳に戻った気分で作ったの。春になると、卒業のシーズン。憧れていた上級生の男のコが学校を巣立っていく。春なのに、お別れしなきゃいけないって、つらいのよネ」といったお話を伺う中で、主人公の女の子がどんな気持ちなのか、歌詞の世界観がより深く理解できた気がしました。

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