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- エアビーアンドビーの元社員がブルームバーグに語ったところによると、同社は毎年何千件もの性的暴行のクレームに直面しているという。
- ブルームバーグの調査によると、エアビーアンドビーはこれらのケースの多くを世間の目から遠ざけていることが明らかになった。
- 和解金、仲裁条項、秘密保持契約が、エアビーアンドビーが安全性の問題に関する調査を避けるのに役立っているとブルームバーグは報じている。
エアビーアンドビー(Airbnb、以下エアビー)の元社員によると同社は毎年、何千件もの性的暴行疑惑に対処しているが、その大半は表沙汰になっていないと、2021年6月15日にブルームバーグ(Bloomberg)が報じた。
今回の調査では、エアビーが、さまざまな安全上の問題に関する訴訟や否定的な報道を避けるために、金銭による和解と強制的な仲裁条項や秘密保持契約などの法的手段を組み合わせて利用してきたことなどが判明した。
ブルームバーグによると、規制当局、調査員、そして一般の人々は、エアビーが関与する安全上の事故のほとんどを把握しておらず、誰が法的責任を負うべきかを裁判所が判断する機会もなかったという。
エアビーは、ネガティブな体験をしたゲストやホストのために、年間約5000万ドル(約55億1000万円)を費やし、事態の収拾に努めている。ブルームバーグが報じたところによると、ある女性はレイプされたと訴えた後、700万ドル(約7億7000万円)の和解金を受け取ったとブルームバーグは報じている。
同社はブルームバーグに対し、安全上の問題を伴う宿泊施設は全体の0.1%に満たず、支払いの大半は物的損害の申し立てに対応するものであり、100万ドル以上の支払いは 「非常に例外的である」と述べている。しかし、2020年には1億9300万泊の宿泊が予約されていたことから、同社の計算を基にすれば、19万3000件の宿泊で安全上の問題があった可能性がある。
エアビーは、2011年、宿泊客がホストの家をめちゃくちゃに壊したことが初めての大きなスキャンダルとなり、2019年にカリフォルニア州オリンダで発生した銃乱射事件では、パーティーハウスを取り締まり、宿泊客とホストの安全を守る取り組みを強化せざるを得なくなるなど、これまで多くの注目を集める事件に対処してきた。
ブルームバーグの報道によると、エアビーは、性的暴行や殺人に関する多数の申し立てを含む、宿泊客、ホスト、宿泊施設に関わる重大な事件の調査を避けてきたという。
エアビーは、和解するたびに秘密保持契約を結んでおり、ユーザーは、自分の体験について話したり、追加の金銭を要求したり、同社を訴えたりすることができなかったとブルームバーグは報じている。また、女性に対するセクハラや性的暴行をなくそうという#MeToo運動が、「秘密保持契約は、性的暴行の被害者を黙らせることが多い」と強調していたため、同社は2017年にこの慣行を中止したと付け加えている。
エアビーの広報担当者、ベン・ブレイト(Ben Breit)はInsiderに対し、同社の知る限り、「2017年以前の宿泊施設での性的暴行に関連する和解契約はない」と述べた。性的暴行を受けた女性との700万ドル(約7億7000万円)の和解は2017年に成立したが、それは、被害者が黙るしかない秘密保持契約を用いた和解を中止した後だとブルームバーグは報じている。
エアビーは、サービス利用規約に強制的な仲裁条項を盛り込むことで、安全性をめぐる訴訟や世間からの批判を回避してきた。このような条項があると、宿泊客やホストは公開される法廷で同社を訴えることができず、その代わりに同社が資金を提供し、多くの場合同社に有利で、そして手続きの秘密が守られる仲裁システムを利用して争いを起こすことを余儀なくされる。
ブルームバーグによると、エアビーに対する性的暴行事件の提訴は1件だけで、裁判所は、同社が暴行事件で告発されたホストの身元調査を徹底して行わなかったことを理由に、この事件の捜査を進めることを認めたという。
エアビーは、仲裁条項の使用についてコメントを控えている。
エアビーは性的暴行やその他の安全上の問題について和解を成立させたり訴訟を回避できるため、裁判所は、ユーザーや宿泊施設が巻き込まれた犯罪について、同社がどの程度責任を負うべきかを判断する妨げになっているとブルームバーグは報じている。
近年、多くの都市がエアビーやその競合他社を対象とした規制を導入しており、エアビーは、ユーザーの安全を確保するためにさらなるリソースを投入している。しかし、ブルームバーグは、ウーバー(Uber)やリフト(Lyft)などの「プラットフォーム」企業が、当初は規制を回避して急成長したのと同様に、エアビーが安全性の問題を世間の目から隠すことができたのは、規制当局が大きく立ち遅れていたからだと指摘している。
米Insiderを運営するInsider Incを所有するアクセル・シュプリンガー(Axel Springer)社はエアビーアンドビーに出資している
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)