ウクライナ、米の支援分散を懸念 ハマス攻撃 反攻に影

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの交戦は、ロシアの侵略が続くウクライナ情勢に影響する可能性がある。ウクライナ最大の支援国である米国は、同盟国イスラエルへの武器供与を表明した。膨大なウクライナ支援で米国が他国を支える余力は低下しており、ウクライナ側は、米国の支援減少が露軍への反攻を鈍化させる要因になりかねないと懸念しているとみられる。

バイデン米大統領は8日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し、イスラエルへの武器輸送を開始したと表明した。イスラエル側は砲弾の供与などを求めたと伝えられている。

ただ、米国の武器備蓄も盤石ではない。米CNNテレビの1月の報道によると、米国はイスラエルに備蓄していた砲弾をウクライナ支援に転用。英BBC放送も今月、北大西洋条約機構(NATO)高官が「(ウクライナ支援用の)弾薬箱の底が見えてきた」と述べたと伝えた。

ウクライナ軍は現在、自軍の損害を最小限に抑えるため、砲撃などで露軍拠点を破壊した上で徐々に前進する戦術を採用している。欧米からの砲弾供給の継続は、ウクライナ軍の反攻の生命線だ。

だが、ハマスとイスラエルの交戦を受け、米国はウクライナに加えてイスラエル支援も強化する必要性に直面した。米国の軍事支援の分散は、露軍に戦局を好転させる機会を与えることにもつながりかねない。プーチン露大統領は今月5日、欧米側からの軍事支援が停止した場合、「ウクライナの余命はほんの1週間だ」と主張した。

ウクライナのゼレンスキー大統領もパレスチナ情勢の余波で米欧のウクライナ支援が減少する可能性を懸念しているもようだ。ゼレンスキー氏は9日、NATO諸国の国会議員らが出席する会議でオンライン演説し、ハマスのイスラエル攻撃とロシアのウクライナ侵略は「テロであり、本質は同じだ」と指摘。ウクライナ支援を継続するようNATO諸国に訴えた。

ゼレンスキー氏は9日のビデオ演説でも「ロシアは中東の紛争にほくそ笑んでいる。世界に不和が広がることはロシアを手助けするためだ」と指摘。ロシアの友好国イランがハマスを称賛しているとも述べた。その上で、ロシアやハマスの「テロ」に対して世界が団結すべきだと強調した。

米、イランを牽制 ウクライナ支援両立にジレンマ

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