UBS、クレディ・スイス買収・合併を発表 世界的な金融危機回避に期待

スイス・チューリヒにあるUBS本社に掲げられたロゴ=16日(ロイター=共同)
スイス・チューリヒにあるUBS本社に掲げられたロゴ=16日(ロイター=共同)

【ロンドン=板東和正】スイスの金融大手UBSは19日、米銀破綻の余波で経営不振に陥ったスイスの同業クレディ・スイスを買収し、合併すると発表した。買収額は30億スイスフラン(約4300億円)で、可能であれば2023年末までの買収完了を目指す。

スイスの2大銀行が統合する大型再編により、クレディ・スイスの信用不安が世界的な金融危機に発展するリスクを回避することが期待される。スイスのベルセ大統領は19日、UBSによる買収について「最近の金融市場に欠けていた信頼を回復するための最良の解決策だと確信している」と指摘した。

スイス政府は、買収に伴って将来発生する可能性がある訴訟などのUBSのリスクを軽減するため、約90億スイスフランの政府保証を与えると決めた。今回の買収はスイス政府が両社の統合を後押ししたとみられており、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も同日の声明で「スイス当局の迅速な対応と決定を歓迎する」と評価した。

UBSなどによると、存続会社はUBSとし、UBS株1株につきクレディ・スイス株22・48株を割り当てる。スイス国立銀行(中央銀行)は買収に関し、両社に最大で1千億スイスフランの資金枠を提供すると表明した。

UBSはスイスのチューリヒに本社を置くスイス最大の銀行グループ。富裕層向けの金融商品やサービスに強みを持ち、資産運用のアドバイスなどを手がけている。英メディアによると、UBSのケレハー会長は「(買収は)クレディ・スイスにとり、緊急の救済措置」と強調。クレディ・スイスのレーマン会長は「利用可能な最良の結果だ」と評価した。

クレディ・スイスをめぐっては2021年、資金運用に失敗した米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引で巨額損失を計上。経営再建を進めてきたが、クレディ・スイスは今月14日に公表した年次報告書で、過去の財務報告の内部管理に「重大な弱点」があったと認めた。筆頭株主のサウジナショナル銀行が追加出資を見送る方針だと報じられたことで株価が急落した。

欧米メディアはこれまで、クレディ・スイスはUBSが提案した買収額に反対し、破談となった場合にスイス政府がクレディ・スイスの国有化を検討していると可能性も報じていた。

一方、金融不安が高まっている状況を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)は19日、ECBや日銀など6中央銀行で市場へのドル供給を協調して拡充すると発表した。

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