楽天創設1年目の2005年には1軍ヘッドコーチを務めた山下氏。当時も分配ドラフトで、オリックスが提示したオリックスと近鉄からプロテクトされた25選手を除く選手を、楽天が選ぶ形でチーム編成された。戦力が整わない中、38勝97敗1分け、勝率・281と黒星を積み重ねた。山下氏も成績不振の責任を取らされる形で5月に2軍監督に配置転換された。ただ、「初年度からドラフト会議に参加できたし、フロント時代にはマー君(田中将)も獲れた。(2013年には)あんだけひどかったチームが日本一になったのか、としみじみ思ったよ」と振り返る。
1軍を持たないくふうハヤテの場合はNPB球団ではなくNPBに参加という形だけに、ドラフト会議には参加できない。その上、所属する元NPB選手はシーズン中でも既存12球団への移籍が可能で、プロ経験者以外は今秋ドラフト会議で指名されれば既存12球団に入団できる。「育成と再生」をチームコンセプトに掲げる中で流出の一途。山下GMは「結局、毎年(戦力的に)同じようなスタートになる。それの繰り返し。チームが強くなっていくという形はなかなかできない」とかじ取りの難しさを痛感する。また、1軍より注目度が下がる2軍戦のみで球団経営を成り立たせるのは容易ではない。1950年から兵庫県を本拠地に「山陽クラウンズ」が2軍戦に出場したが、経営難で52年には撤退している。
現時点でNPBが「将来の1軍拡張にはつながらない」とする中、山下GMは「だからこそ、余計に『歴史の一ページを作る』という選手の心構え、姿勢が問われる。強い、弱いは別にして、地域貢献できるチームになってほしい。そして、何年後かに〝1軍も作ろうよ〟という声が上がれば、最高ですね」。球団運営するハヤテ223・杉原行洋社長も競技人口減少で先細りする野球界の振興活動に寄与することを最大の目標に「スポーツは、スポーツであって、スポーツではない」との言葉を好む。そこには勝敗を超えた新球団としての使命がある。