モヤシ消費26年ぶりの多さ 不況、野菜高騰で
メーカーは原料高に苦悩
「不況に強い」といわれるモヤシの消費拡大が続いている。総務省の家計調査では4月時点で1984年3月以来、約26年ぶりに1世帯当たりの購入量が700グラムを超えた。リーマン・ショックが起きた2008年9月から前年比プラスを維持。雇用情勢など経済の先行き不安に4月は野菜の高騰が重なった。ただ、メーカーは中国産原料豆の値上がりに見舞われ、採算は悪化している。
栃木県真岡市。縦横10メートルあるコンクリートの育成室でモヤシが所狭しと育っている。メーカー最大手、成田食品(福島県相馬市、佐藤義信社長)の工場だ。原料豆が約10日間で袋詰めされるまでに成長し、関東のスーパーや生活協同組合に次々と納入されていく。
同社の4月の出荷量は前年同月比3割増、5月は2割増だった。鈴木与市工場長は「6月に入り引き合いは少し落ち着いたが、12カ所ある育成室を7月中に4カ所増やす」と話す。
モヤシの小売価格は100グラムあたり15~20円。現在、同35円のレタスや同43円のキュウリなどと比べ割安だ。料理のかさが増えることもあり、節約したい消費者の強い味方となっている。
天候不順で野菜が軒並み値上がりした4月は割安感が特に強まった。総務省によると、全国の2人以上世帯(農林漁家世帯除く)の購入量は前年同月比17%増の713グラムとなった。
関東に展開するスーパーのいなげやは、1袋240グラムに2割増量した商品の売り場を拡大。土曜日は25%の値引きで集客の目玉商品にしている。店舗に来ていた40代の主婦は「中華風などの合わせ調味料が充実したことも、モヤシを買う機会が増えた理由」と話す。
だが、急増する消費にもメーカーは素直に喜べない事情がある。原料の9割にのぼる中国産緑豆の価格が急騰しているためだ。5月の輸入価格は前年同月比約2倍の1トン2600ドル前後になった。
中国では降雨量の減少が響いて09年の収穫量が平年の6~7割にとどまったもようだ。中国も「おかゆやスープ具材用に内需が増えている」(商社の豊通食料)といい、モヤシ原料の争奪戦が起きた。
成田食品は、製品の転嫁値上げについて「消費者の買い控えが怖いので当面は我慢したい」との構え。"物価の優等生"として支持されてきたため、値上げしにくい面もあるようだ。
「収益では落第生になってしまった」(全日本豆萌工業組合連合会=東京・足立)。消費拡大をよそに、中小を軸に全国約200社あるメーカーに淘汰の波が押し寄せている。
関連企業・業界