テクノロジーは日々進化しているのに、どうして交通渋滞はなくならないのだろう?

せっかちなぼくは渋滞にはまる度に、そんなことを考えてしまいます。そして「混んでますね〜」と安易に口にするタクシードライバーに当たったりすると、「いや、あなたプロなんだから抜け道とか知らないの?」と、口には出せない小心者のくせに、心では思ってしまうのです。

もはや、諦めていました。渋滞にはまるのは自分の運が悪いのであって、タクシードライバーを責めるのはお門違いなのだ、と。でも、タクシードライバーの中でも経験を重ねたプロは渋滞回避術を知っているのです。

これから全5回の連載で、日本交通の徳山さん・野村さんにお聞きした"プロ"の技術を紹介します!(Top image by ナカオ☆テッペイ

第1回目は、虎ノ門、祝田橋を攻略

131216taxi01_02
日本交通にて1年前まで現役ドライバーとして勤務し、現在は新人ドライバーの教育を担当している徳山さん(左)と広報の野村さん

徳山さん:タクシードライバーなら、時間帯によって絶対に通らない場所があります。夕方なら虎ノ門や渋谷の246と明治通りの交差点、夜なら六本木の交差点、朝なら昭和通りと明治通りの交差点...。

渋滞の原因は、(当たり前ですが)それが主要幹線道路なので周りの道からどんどん車が流入してくることにあるんですよね。加えて、信号のタイミングもあります。

例を挙げるなら、皇居の南側に位置する祝田橋の交差点。二車線道路で直進と左折しかできないのですが、左折信号が青になるタイミングで一度に約2台しか通れない。交通量が少なければスムーズですが、集中する時間はさらに渋滞が激しくなるんです。

では、いったいどのようなルートを通れば渋滞を回避できるのか。虎ノ門と祝田橋の交差点について解説してもらいました。

Googleマップ、NAVITIMEだとこんな感じ

今回フォーカスをあてる虎ノ門と祝田橋の交差点を通る可能性があるルートを、Googleマップで検索してみます。出発点を東京タワー、目的地を東京ドームに設定。すると、こんなルートが表示されます(有料道路を使わない場合)。

131216taxi01_08.jpg

桜田通り、国道1号線、本郷通りを行くルートで、虎ノ門交差点を北上、祝田橋を西に進みます。

ちなみにNAVITIMEでも調べてみました。

131216taxi01_09.jpg

こちらは、芝公園三丁目から北上して祝田橋を北へ、内堀通り、白山通りを通るルート。虎ノ門は通りません。

では、実際におふたりに虎ノ門と祝田橋の交差点攻略法を教えていただきましょう。

プロのドライバーは"通らない"

131216taxi01_010.jpg

徳山さん:東京の中心は大手町や丸の内だとよく言われますが、タクシードライバーにとっては東京の中心は虎ノ門。霞ヶ関の官庁があるのはもちろん、オフィスも多いため、人もクルマも必然的に集まってくる。特に夕方は全方向から車が集中するため飽和状態です。

回避するにはどうすればいいかというと、鉄則としては"通らない"。六本木や赤坂からくるルートの場合は、溜池山王駅から国会裏を通って、桜田門に抜けてください。桜田通りを北上してきた場合は、虎ノ門三丁目を左折して米国大使館から霞ヶ関の方向へ、もしくは虎ノ門一丁目を右折して西新橋交番前を通って西幸門前を通るルートがおすすめです。

抜け道を知るということは、まずは、どの時間にどこの道が混むことを把握することが大事。その引き出しの多さが明暗を分けるそうです。

例えば虎ノ門の交差点を回避して、西新橋交番前から西幸門前に抜けた場合、実はその先にも渋滞スポットが待ち受けています。それが、先述した祝田橋の交差点です。では、その祝田橋をどう攻略するのか。

祝田橋も、時間に関係なく"通らない"

131216taxi01_011.jpg

徳山さん:祝田橋の交差点の場合、霞門から祝田橋に向かう信号で渋滞が起こります。

西幸門前か霞門の交差点で、1本隣りの道に移ってください。1本左の道を選ぶなら、霞ヶ関1丁目か2丁目を右折、桜田門を右折して祝田橋を左折。1本右なら内幸町を左折、馬場先門を左折して二重橋を右折。

すると、渋滞スポットを通らずに内堀通りに入ることができます。この霞門〜祝田橋の間は、私なら、朝・昼・深夜と時間に関係なく、クルマが1台でも止まっていたら通らないですね。

Googleマップの提案してくれたルートでは虎ノ門の交差点を通っていて、NAVITIMEでは祝田橋を北上しています。つまり、どちらも渋滞の可能性が高いルート。スタート地点からゴールまではこれらのルートをベースにするのもいいでしょう。ただ、要所要所でプロのドライバーの渋滞回避術を適用していくと、より快適に移動できるはずです。

「道の神様」と、皇居周辺

このように、タクシードライバーの方々は日々の業務を通して、それぞれの渋滞回避マップを作っています。ただ、その情報量はやはりキャリアと個々の向上心によって差が出てくるそう。

徳山さん:同僚の中には"道の神様"というくらい詳しいドライバーもいるんですよね。彼にしてみたら私の知識なんてまだまだ序の口です。

彼は、信号が何秒で変わって何秒で曲がれるかとか、成田空港に向かうお客様がトラベラーズチェックの両替をしたい場合にカウンターまでどう行けばいいかだとかまで把握して、お客様を乗せているんです。

皇居は右回り? 左回り?

徳山さん:タクシードライバーにとって情報もサービスの一環です。ただし、一方的に押し付けるのも良くないんですよね。お客様によってはお気に入りのルートがあって、それこそが最短のルートなんです。私が新人教育でまず教えるのが、皇居周辺の道を回る際には右回り左回りのご希望をお客様にきちんと確認する、ということです。

131216taxi01_012.jpg

徳山さん:晴海通り、青山通り、六本木通り、新宿通りなど、皇居には多くの主要道路が繋がっています。皇居を回って反対側に抜ける場合、私の経験としては左回りが速いと思っていますが、お客さまそれぞれにこだわりがあっていいと思います。正直、そんなに変わらないこともありますから。

ただ、九段坂病院を右折する交差点は渋滞することが多いので気をつけてください。交通量が多い割に、右折の青信号が短いんですよね。私ならその手前、千鳥ヶ淵を右折し、白山通りか、1本手前の目白通りを左折します。あとは、どうしても急いでいる場合には、各種高速道路が皇居周辺を走っているので、その選択肢も残しておくのがいいと思います。

交通渋滞にはまったら、それをどう回避すればいいのか。話を聞けば聞くほど、経験深いドライバーが運転するクルマに乗りたいと願うわけですが、そればっかりは運次第。ならば、自分で情報を知識として持っておいて、新人タクシーの方にも共有するぐらいの気持ちがいいのかもしれません。

徳山さんも、お客さんからルートを聞いて「なるほど!」と自分の道にしてきたこともあるそうです。情報と知識をドライバーとお客さんの間で共有し続けることで、それぞれの渋滞回避マップが完成していくのだと思います。

次回以降は、六本木(2回目)、新橋・有楽町(3回目)、渋谷表参道(4回目)の渋滞回避マップを紹介しますので、ぜひ、楽しみにお待ちください。

(松尾仁・奥畑瑞雪)