26日に発足する安倍政権の閣僚、党役員人事をめぐるニュースが騒がしい。06年の首相就任時は“お友達内閣”と揶揄された揚げ句に“官邸崩壊”。今回はその轍は踏まない姿勢だというが、もちろん盟友の名前も数多く上がっている。
総裁選で争った石原伸晃前幹事長(55)や根本匠・元首相補佐官(61)の閣僚入りも報じられており、この2人で思い出されるのが、かつて話題になった「NAISの会」。自民党の安倍晋三総裁(58)も名を連ねる4人の集まりで、「A」が安倍氏、「I」「N」がそれぞれ、石原氏、根本氏。残った「S」は最初の安倍内閣で官房長官だった塩崎恭久氏(62)なのだが、その塩崎氏の名前が今回はまったく出ていないようだ。
盟友であり、9月の総裁選にあたっても、不利もささやかれた出馬表明当初から安倍氏の支持を明言した塩崎氏は、本来なら真っ先に名が上がってもおかしくない。その塩崎氏は、原発再稼働問題におけるキーマンになりうる存在だ。
原発再稼働をめぐっては、今年発足した原子力規制委員会が新たな安全基準を来年に設ける。「原発ゼロ」を明言しない自民党としては「安全性が確認できた」原発はすみやかに再稼働させたいところだろうが、規制委員会も3・11以前の保安院よりは技術的に厳しい立場でチェックに臨むはず。しかも政治からは独立した立場にある。この「3条委員会」と言われる、政治から独立した規制組織を作るよう強く主張したのが野党時代の自民党の塩崎氏だった。
委員の人事は国会の同意を要する。自民党が再稼働に前のめりになって規制委員会を骨抜きにしようとして、人事での混乱が生じる可能性もなくはない。独立行政委員会としての規制委員会設置を求めた塩崎氏が、新政権でどのようなポジションに就き、再稼働問題で規制委員会と政府・与党の間にあつれきが生じた場合、どう振る舞うのかは重要なポイントとなる。
もう一人の注目は、入閣候補と報じられた五輪メダリストの橋本聖子参院議員(48)。総裁選では町村信孝氏(68)の選対本部長を務めたが、外務副大臣に起用された当時の首相だった麻生太郎氏(72)が今回は副総理として入閣するだけに、重用される可能性もある。
閣僚もしくは政務三役となった場合、ソチ五輪を1年あまり後に控える日本オリンピック委員会(JOC)や日本スケート連盟に影響が及ぶ。JOC理事、スケート連盟会長という役職は停止ということになる。前回の政権交代で外務副大臣を退任したことにより、スポーツ界の職務に戻り、2010年バンクーバー五輪で日本選手団団長を務めた経緯がある。同五輪直前にはスノーボード国母和宏の服装をめぐる問題が発生し、団長判断で「出場不可」の処分は回避した。
ロンドン五輪でも日本選手団副団長。当然、ソチでも団長が見込まれるのだが、政治家としてのキャリアとの兼ね合いをどうするのか。安倍人事はJOC、スケート連盟も固唾を呑んで見守ることになる。