麻原の死刑執行はアレフを抑制して再発防止の決め手に | 上祐史浩

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 先日、麻原の死刑施行に関してのトークイベントを行いました。そして、その後も考えた上で、一つの結論として、麻原の死刑の執行が、今の新しい信者を増やしているアレフの抑制のために決定的に必要であるという視点が重要だと思いましたので、皆さんにお伝えしたいと思います。

 

 まず、その前提として、アレフは、今も若者を中心に新しい信者を相当増やしています。しかも、そのやり方は、まずはアレフを出さない覆面ヨーガ教室で人間関係を作り、その間に、オウム事件は陰謀である(教団は関与していない)という嘘を刷り込んでしまうのです。

 

 そうした洗脳教化を受けた新しい若い信者は、国家・社会・警察・マスコミに対して敵対的な意識を持つようになります。これは一種の妄想状態・病的状態であり、潜在的な危険性を形成すると言ってよいと思います。ただし、教団の広報部は、陰謀説を公に主張してはおらず、あくまでの裏で密かに行っているのです。

 

 さらに、それは、彼らの極めて歪んだ布教の動機になっていると思われます。そうした盲信・洗脳状態になった若者が、その両親に、「アレフの幹部に合えば、一連の事件が陰謀であると分かる」と真顔で熱心に主張して非常に困って悩んでいるという相談を私自身が直接受けたことがあります。私たちは、これまでに150名ほどのそうしたアレフの信者の脱会の相談に乗ってきました。

 

 このアレフの問題の現状は、ひかりの輪が長年運営してきた「アレフ問題の告発と対策」というブログに記載しています。ブログのトップページ 勧誘の手口の実態

 

 

 次に、本題に入ります。麻原の執行が、こうしたアレフの活動をを抑制する大きな効果を持つことについてです。

 

 まず、大きな決め手となるのは、アレフが布教のために絶対に必要な麻原の著作物である教材が、麻原の死刑執行によって、いままでのようには利用できなくなることです。著作権は、教祖から教祖の家族たちに相続されますが、相続者の中で、アレフが引き続き、それを利用することに強く反対する者が、確実にいるからです。

 

 たとえば四女や長女は長年の間アレフに強く反対してきました。また、三女・次女・長男は、2014年から15年以降、アレフと一線を画していると主張しており、最近はアレフの解散を求めることをテレビ番組で表明していました。よって、彼らも使用に反対する可能性があります。この著作権問題に関する詳細は、アメブロの別の記事をご覧ください。

 

 アレフは麻原の教えとその教材を唯一絶対としています。著作権上、著作物を利用できなくなるとは、今後は、著作物を複製・販売・陳列・上映することなどが禁じられるということです。そのため、新しい信者の教化が難しくなり、セミナーで麻原の説法ビデオ・マントラ音声などを使ったり、道場での書籍等の陳列はできません。そして、それらの販売がアレフの主たる財源となっており、財務的にも大きな打撃となります。 

 

 二つ目に、今現在のアレフの修行・布教などの活動の動機の一つに、弟子が麻原に帰依して修行するならば、麻原は死なない(彼らの言葉では涅槃しない)というものがあります。

 

 すなわち、彼らから見れば、麻原を生死を決めるのは、死刑を執行する権限を持つ法務大臣・法務省ではなく、麻原に帰依をする弟子たちに応じて決まる(麻原がその超能力で決める?)ということなのです。よって、死刑を執行することで、この盲信に基づく活動動機を取り除くことができるということになります。

 

 これに関連して、麻原は、以前から、自分はキリスト・救世主であり、不死の身体を得るといったことをその書籍・説法・獄中からのメッセージで説いています(トークイベントで皆さんにお見せした通りです)。よって、私がまだアレフにいた15年前には、私が麻原が事件に関与しており、刑死する見通しであることを話すと、教祖の死を語るなどとんでもないと激しく批判されました。

 

 麻原の死刑の執行は、こうしたアレフの信者の盲信を否定し、彼らの目を覚まさせることができます。逆に言えば執行を停止すれば、アレフは、教団を陰謀によって陥れた社会に対して、自分たちの帰依によって宗教的な勝利を得、麻原の予言が成就したと解釈するでしょう。

 

 そして、いっそう盲信を深め、ますます陰謀説を用いた洗脳的な教化活動を広げていくという悲惨な結果を招くと思います。なお、これらの詳細に関しては、産経のネットの論壇に寄稿しましたので、こちらをごらんください。

 

 特に再発防止のためには、アレフがますます拡大して、組織力を高めていくことは望ましくありません。残念なことに、私たちがアレフを脱会して以降、今年に至るまで、殺人や傷害などの重大な犯罪はないものの、アレフの出家信者や在家信者が教団の活動に関して逮捕されて有罪判決を受けた事例が複数存在しています。

 

 また、有罪にはならなかったものの、強制捜査・書類送検・逮捕された事例は多数に及んでいます(なお、ひかりの輪は、その専従スタッフが逮捕・起訴されたことは一度もなく、一般会員が団体の活動で逮捕されたこともありません)。

 

 さらに、アレフの最高幹部が居住する施設で、具体的に誰が行ったかは判明していませんが、公安当局の関係者や教団に反対する弁護士の写真などを串刺しにしていたことが、立ち入り検査の際に発見され、大きく報道されたことありました。

 

 この最高幹部は、私がアレフにいた時に、私が麻原を外す教団改革をしようとしていたことを批判して、私に毒を盛ることを家族にもちかけた事実があります(私が直接本人から聞いていますし、家族も著作の中で書いています)。こうして、残念ながら、アレフは、順法精神が十分だとは言うことができません。これらの詳細に関してはこちらをご覧ください。
 

 

 それ以前に、国家・警察・マスコミが、陰謀によって、教祖・教団を陥れていると信じ込み、敵対感情を持つということ自体が、被害妄想の精神病理だと思います。この被害妄想が、かつて麻原が暴力主義に走った背景動機でした。よって、長期的な再発防止のためには、被害妄想的な敵対感情を持つ集団の拡大は、将来に影を落とすものだと言わざるを得ません。

 

 第三に、麻原は、オウム真理教の教義では、唯一殺人などを指示できる権限がある存在とされています。その意味でも、麻原の死刑の執行は、オウム・テロを根絶する決め手となります。

 

 もちろん、麻原が死んでも、残った教団が独自にテロを起こす可能性がないのか、という不安をいただく方もいるでしょう。

 

 しかし、教団が存在する限りは、テロを起こせば、今度こそ破防法が適用されて教団が解散となるという事情があります。かつて破防法の適用が検討されたときに、麻原が教団・信者にテロ・犯罪を禁じることを公に表明しています。その結果、適用はされませんでした。また、20年くらい前ですが、ロシアの信者数名が、麻原の奪還を計画した時も、国内外の信者・教団によって、それは否定され防止されました。

 

 また、アレフは麻原の刑死後の睨んでか、麻原の二男を後継の教祖にすることを考えています。こうした事情から、執行しても、団体が存在する限りは、麻原の指示に反して、報復テロなどを行うという可能性は少ないと思います。この辺の詳しい事情に関しても、産経のネット論壇の寄稿をご覧ください。

 

 

 さて、この点に関連して、長らく弁護士や家族に接見しない麻原が、心神喪失の状態にあるとして、その治療をして元の状態に戻して、麻原の話を聞きたいという声があります。

 

 なお、裁判所・検察・法務省・拘置所は、心神喪失だとはみなしておらず、死刑執行は合法であると判断しています。専門家の精神鑑定に加えて、拘置所の報告では、麻原は、入浴・運動のためには房から出るが、面会はかたくなに拒絶しており、詐病ないし詐病ではなくても心神喪失には至っていない精神活動の低下に過ぎないとしています。

 

 これに対して、家族の一部や、麻原の弁護士や、弁護士に依頼されて接見した精神科医は、こうした国の判断を信用せずに強く否定しており、麻原の治療が必要であり、治療して話を聞きたいとして、執行に反対しています。

 

 しかし、こうした考え方には、いろいろな危険性があることをお話ししておこうと思います。

 

 まず、仮に麻原が、再び弁護士や家族と接見をするようになったならば、麻原が変調をきたした1996年以前と同じように、獄中から教団と信者に多数のメッセージを出して、悪い意味でアレフ教団を活性化させる可能性があるのです。

 

 実際に、1996年までに関して言えば、麻原は、破局予言や不死の身体を得る話をしたり、布教を命じたりして、信者の盲信を加速させました。よって、再び接見するようになれば同じことが起こる可能性は否定できません。

 

 そして、接見する者が、本当の意味で、麻原を改心・反省に導くことができる保証は全くありません。実際にこれまで全くできなかったのですから。

 

 それはおろか、接見する者が家族であれば、彼らは今も麻原の信者としてアレフ教団に関わっているか、かつては信者であった者たちがほとんです。その中には、アレフ教団に関わっていないと主張する者たちもいますが、その中にも、麻原の事件の関与を明確には認めてない者たちがいます。

 

 なお、仮に、そうなったとしても、前に述べた通り、教団の存続と教祖としての生き残りを重視して、麻原が、犯罪行為を指示する可能性は低いとは思います。しかし、物理的には、麻原と教団が繋がり、昔の体制がよみがえるわけです。

 

 かつての事件も、麻原は自ら手を下したのではなく、弟子に指示をして起こさせたものです。また、前に述べたようにアレフ側は、麻原とコンタクトがない今現在さえ、十分な順法精神があるとは言い難い状態です。よって、麻原とアレフの再接触が、望ましくないことは言うまでもありません。

 

 さて、麻原と接見が可能なのは、麻原の妻・子供たちと弁護士です。麻原の妻と子供たちの一部は、アレフと繋がって裏から支配しているとされています。また、弁護士との接見の際は、刑務官が立ち会うことはできませんから、当局としては、麻原がどのようなメッセージをアレフ教団に出しているかは、まったく把握できません。

 

 実際に、96年までもそうだったと思います(なお96年までのメッセージに関しては、2000年以降の強制捜査などで警察が押収した事実があります)。更には、オウム真理教に出家していた者の中で、その後脱会しましたが、(かつての青山元弁護士にように)弁護士資格を取得したものも複数存在しています。

 

 なお、治療して接見を再開したならば、その時こそ心神喪失ではなくなったとして、死刑執行ができるという考えもあるかもしれません。しかし、接見を再開しただけでは、心神喪失ではなくなったと判断できるかはわかりません。

 

 実際に、今のような状態に麻原がなったのが1997年ですが、その後も10年くらいは、家族らと接見をしていた事実があります。よって、今の状態を心神喪失というのであれば、心神喪失の状態で接見が行われることになります。しかも、弁護士との接見は監視ができない、密室での接見となります。

 

 更には治ったり、ぶり返したりと、症状が行きつ戻りつを繰り返せば、執行できない恐れもあるのではないでしょうか。本人がぶり返したことを装ったとしても、いったん詐病ではなく、心神喪失と認めて、治療を再開する以上は、それを詐病と断定できるとは限らないのではないでしょうか。

 

 加えて、治療目的の執行の延期によって、著作権侵害などでアレフの活動を抑止できなくなり、彼らの盲信が深まって大きく勢いづかせることになります。そうした状況の中で、アレフと麻原の連絡が回復する可能性があるにもかかわらず、いつ執行できるか分からないという危うい状態を抱えることは、望ましくないと思います。