『コウノドリ』で子宮頸がんの怖さ知ったという声

「『コウノドリ』を読むまで、子宮頸がんはもっと高齢の人がかかるがんだと思っていました。自治体が接種を止めてしまい打ててない世代ですが、接種を真剣に考えようと思いました」(20歳女性)

「もしも妊娠中に、子宮頸がんが発覚したら……。自分の命も赤ちゃんも大事……。究極の選択。他人事じゃない。接種したいと思いました」(16歳女性)

「HPVワクチン接種を、と言われても、娘は大丈夫でしょ、って思っていました。でも、漫画のような出来事がもしも娘にあったら……。ワクチンを怖がるだけでなく、きちんと情報を得なければと思いました」(45歳女性)

「会社の同僚が先日パートナーを子宮頸がんで亡くしました。女性は32歳だったといいます。ここに描かれていることはフィクションではないと思う。娘が対象年齢になったら打ってほしい、と妻と話しています」(37歳男性)

これらは『コウノドリ』の「子宮頸がん」のエピソード(13巻40話・14巻41話)に寄せられた声だ。昨年の10月、そして今年3月と2度に渡り、漫画家の鈴ノ木ユウさんのご厚意で、1週間期間限定で、218ページにわたる「子宮頸がん」のエピソードを無料試し読みさせていただいた。そのとき上記のコメント以外にも本当に数多くの感想や共感をいただいた。

「子宮頸がん」と聞いても、がんであることは理解できても、それが一体どんな疾患で女性の体にどんな負担をかけ、どんな治療やリスク、哀しみがあるのか。それをリアルに感じるのは難しいものだ。FRaUでも、子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)や子宮頸がんを予防できるHPVワクチンについて、何度も記事化してきた。そんななか、多くの人に「自分事」として捉えてもらうことの難しさを感じていた。

しかし、『コウノドリ』の「子宮頸がん」のエピソードを読んでくださった方々は、物語の中の出来事含め、子宮頸がん、HPVワクチン接種について、自分事として捉えていた。

 

さまざまな不安や心の動きを丁寧に描く優しさ

この『コウノドリ』の「子宮頸がん」エピソードが初めて世に出たのは、2016年。最近では少しずつHPVワクチンのニュースが増えているが、当時メディアではHVPワクチンについてほとんど情報配信しない状況が続いていた。

日本では2013年4月に定期接種がスタートした2か月後に、接種後にさまざまな症状が現れた報告などがあり、接種差し止め通知が各自治体に出されて、そこからHPVワクチンの空白期が出来ていた。そんな時期に、子宮頸がんをテーマにHPVワクチンに関しても触れている。勇気ある決断の背景には、鈴ノ木さんや監修の医師たちの真摯な想いがあったに違いない。

(C)鈴ノ木ユウ/講談社『コウノドリ』13巻より

その後、国内外の研究により、安全性とさらなる有効性のエビデンスが蓄積されているにもかかわらず、残念ながら、未だにHPVワクチンは自治体からのお知らせが届かないエリアもあり、国による積極的勧奨がなかなか進んでいない。このことに多くの医師たちが問題提起をしている。そして、HPVワクチン肯定派と否定派で意見がSNSでもかけ離れてしまう。ともに、娘や自分自身の命を守りたいという想いは同じであるはずなのに……。鈴ノ木さんも同じ思いを感じているという。

「これはコウノドリで子宮頸がん編を描いた当時に私自身が感じた素朴な疑問のひとつでした。ですが今、世の中の流れは少しずつHPVワクチン接種勧奨へと向かっている印象があります。

個人的にそれは素晴らしいことだと思っています。多くの方にHPVワクチンの正しい情報が伝わり、理解され、接種する機会が増えますし、将来的には男子への接種にもつながる。

ただ同時に、HPVワクチンが積極的勧奨となった時、ワクチン接種を選択しない人が尊重されず、叩かれるような社会、世の中にはなって欲しくはありません。

正しい情報が伝わる中、ワクチン接種を選択する人、しない人がこの先もいるかと思います。その時、お互いがお互いの思いや気持ちを理解し、いたわりのある考えや距離で近い将来、子宮頸がんで苦しむ女性がいなくなる日本へと向かってくれたらと切に願っています」

今再び、HPVワクチンの積極的勧奨を政府に求める動きがある中、鈴ノ木ユウさんのご厚意で、1週間期間限定で、「子宮頸がん」のエピソードを再び無料試し読みできることになった。

子宮頸がんやHPVワクチンの話だけでなく、この物語は『コウノドリ』の主人公の鴻鳥サクラが産婦人科医を目指すこととなる生い立ちも含め、重要なキーワードを多く含んだエピソードだ。女性だけでなく、夫の気持ち、母の気持ちなども描かれている。ぜひとも「自分事」として感じていただければと思う。