五輪汚職、元理事を再逮捕 KADOKAWA側も2人逮捕
東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会スポンサーに選定されるよう便宜を図った見返りに出版大手のKADOKAWAから約7600万円の賄賂を受け取ったとして、東京地検特捜部は6日、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)を受託収賄容疑で再逮捕した。同容疑で高橋元理事の知人でコンサルタント会社社長、深見和政容疑者(73)も逮捕した。
AOKIホールディングス(HD)と合わせ、高橋元理事が受け取った賄賂額は計約1億2700万円となった。関係者によると、元理事はKADOKAWAの事件について「身に覚えがない」と容疑を否認している。特捜部はスポンサー募集業務の一部を担った広告大手の大広から深見社長側に提供された資金についても捜査している。
贈賄容疑で逮捕したのはKADOKAWA専務だった芳原世幸(64)、同社担当室長だった馬庭教二(63)の両容疑者。特捜部は6日、KADOKAWA本社(東京・千代田)や同社の角川歴彦会長の自宅を家宅捜索した。押収資料を分析して資金の流れの全容解明を進める。同社は6日、「本件を厳粛に受け止め、当局の捜査に全面的に協力する」とのコメントを出した。
高橋元理事の逮捕容疑は、KADOKAWA側から大会スポンサー選定で有利な取り計らいを受けたいとの依頼を受け、2019年7月~21年1月に10回にわたり、同社から深見社長のコンサル会社「コモンズ2」(東京・中央)の口座に約7600万円の賄賂を送金させ受領した疑い。
関係者によると、KADOKAWAは大会スポンサー契約を希望し、深見社長に相談した。深見社長を通じ同社の意向を把握した高橋元理事は、出版分野のスポンサー枠を新設するよう組織委やスポンサー募集業務を担っていた電通へ働きかけたという。
KADOKAWAは2019年4月に組織委と約2億円でスポンサー契約を結んだ。同社からは翌月以降、高橋元理事側に10回にわたり計7000万円超が送金された。特捜部は資金提供が賄賂にあたると判断したとみられる。
特捜部は既に同社の角川会長らから任意で事情を聴いた。角川会長は5日、取材に応じ「高橋元理事に賄賂を渡した認識は全くない」と不正を否定。資金提供については「スポーツ全般のコンサルタント料だった」と説明した。
特捜部は8月、スポンサー契約で便宜を図る見返りにAOKIHDから計5100万円の賄賂を受け取ったとして高橋元理事を受託収賄容疑で逮捕した。勾留期限の6日、同罪で起訴した。AOKIHD前会長の青木拡憲容疑者(83)ら3人を贈賄罪で起訴した。
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