《昭和20年3月7日、農林官僚の父、専一さんと母、安紀さんの長男として東京都で生まれた。「禎一」という名前は専一さんが陸軍中将の岳父、影佐禎昭から一字を取って付けた。影佐は日中戦争での汪兆銘政権樹立に重要な役割を果たしたことで知られる。影佐も3月7日生まれで、この日は52歳の誕生日だった》
私が生まれたころ、祖父はパプアニューギニアのラバウルに出征していました。祖父にとっては私が初孫です。3歳のときに亡くなりましたが、両親からも、祖母やおばからも、ずいぶん祖父の話を聞かされました。軍人としての評価はいろいろあると思いますが、母やおばは、子供を笑わせるのが好きな、非常に面白い人だったと言っていました。落語なんかも好きだったようです。それなりの軍人でしたから、七回忌などは同盟通信社にいた松本重治さんや外交官など、そうそうたる方々がみえていたのを覚えています。
祖父の家には平安時代の武将の絵本がありましてね。今のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出てくる上総広常なんかは、あのころの本好きな男の子にとってはごく親しみのある人物ですよ。他にも畠山重忠とか大庭景親とか土肥実平とか…今でも名前がすらすら出てきます。小さいときに絵本で読んで覚えたことは、大人になってから覚えるより忘れないものですね。