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【台北=園田将嗣】台湾で年に1度行われる最大の軍事演習「漢光」が24~28日、各地で実施された。今年の演習では、中国の
26日、台北郊外の桃園国際空港の上空に、中国軍に見立てた米国製の戦闘ヘリ「ブラックホーク」4機と「アパッチ」2機が現れた。繁忙期のこの時期に施設の利用を一部制限し、台湾軍が、ターミナルに侵入した敵兵を警察と協力して制圧する手順を確認した。
空港近くの海岸線は、敵軍が上陸するのに適した地形とされ、総統府が位置する台北までわずか約30キロ・メートルの距離だ。占拠されれば敵軍に攻撃拠点として利用され、住民の空路の避難ルート確保も難しくなる。
演習を視察した蔡総統は「我々が直面する脅威と挑戦は複雑になるだろう。様々な場面を想定し、対応力を強化しなければならない」と強調した。今年の演習では、ロシア軍の侵略で空港が一時占拠されるなどし、その後、市街戦で抵抗に転じたウクライナの事例を参考にしたとみられ、桃園空港と同様に重要拠点である台北駅でも、市街戦を想定した訓練が実施された。
中国軍は昨年までに、強襲揚陸艦「075型」3隻を就役させ、武力侵攻の課題となってきた渡海・上陸作戦の能力向上に動いている。将来的には計8隻の配備を目指すとされる。
これまでの演習は、海岸線などで上陸を阻止する水際防衛に主眼が置かれてきた。しかし、中国軍に詳しい台湾の調査研究機関「国家政策研究基金会」の掲仲・副研究員は「上陸を阻止する作戦が成功する可能性は低い。後方で戦争が起きることを避けることは難しくなるだろう」と指摘する。
また、昨年8月のナンシー・ペロシ米下院議長(当時)の訪台後、中国軍は台湾を包囲し、台湾東部沖などに向けて弾道ミサイルを発射した。空母「山東」の部隊も、台湾東部の海空域で遠洋訓練を行っている。台湾軍は台湾海峡だけでなく、背後となる東部の防衛も意識せざるを得なくなっている。
今年の演習では、東部の軍事飛行場の滑走路が使用できなくなった場合に備え、南東部・台東の民間空港を接収して、米製戦闘機F16VやC130輸送機を移し、防空能力を維持する訓練も予定されていた。今回は台風の影響で中止となったが、蔡政権は中国との緊張が高まる中で、台湾を取り巻く情勢の変化に敏感に対応しようとしている。