健さんは絶句、監督は骨折…映画『南極物語』のヤバすぎる撮影秘話

プロデューサーとキャストが語り尽くす

映画『南極物語』は、南極大陸に残された兄弟犬タロとジロと越冬隊員が1年後に再開する実話をもとにした作品だ。企画制作はフジテレビで、主演は当時50代に差し掛かった高倉健。極寒の地で生き延びる犬たちのサバイバルと、犬たちを置き去りにせざるを得なかった男の苦悩する姿は、涙なしには見られない。あの感動の舞台裏を、当時を知る関係者が語り尽くす。

今回のディープ・ピープル
角谷優/’38年、東京都生まれ。映画プロデューサー。本作以外に手がけた作品は『ビルマの竪琴』や『子猫物語』、『熱海殺人事件』、『梟の城』など

大林丈史/’42年、岡山県生まれ。俳優。俳優座養成所の第16期生で、同期には古谷一行がいる。本作では第2次越冬隊長役とともに、助監督も務めた

長谷川初範/’55年、北海道生まれ。俳優。愛称は「ショパン」。代表作は『101回目のプロポーズ』など多数。本作では第1次越冬隊員役を務めた

「犬の映画に客が来るか!」

角谷 今年の夏も暑い日が続きますね。当時、フジテレビの局員だった私がプロデューサーを務めた『南極物語』は、同じように夏真っ盛りの'83年7月23日に公開されました。

南極越冬隊と犬たちとの実話を元にした本作は、監督の蔵原惟繕さんと弟でプロデューサーの惟二さんが長年企画を温めていました。惟二さんがフジに協力を依頼してこられたのが始まりです。

大林 私は蔵原監督とは縁があったので、第2次越冬隊長役を演じるとともに、作品の助監督も務めました。

長谷川 僕はまだ映画に出始めたばかりの頃でして、第1次越冬隊員の役で出演しました。

角谷 実際に撮影が始まるまで、いくつものハードルがありました。一つ目は金銭面の問題です。いくらかかるかわかりませんから、どこも相手にしてくれなかった。当時、東映の社長だった岡田茂さんには「犬がウロウロするだけの映画に客が来るか」と一刀両断されました(笑)。

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交渉の末、学研が製作費の半分を出してくれることになって、企画が動き始めました。

長谷川 スケールが大きな映画なので、どうしてもおカネはかかりますよね。僕もこんな大作に参加させて頂き、身が引き締まる思いでした。

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