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屋外人工栽培に成功 安定生産で地域振興 県林業技術センター アミガサタケ【岩手】

県林業技術センターが人工栽培に成功したアミガサタケ(4月、同センター提供)

 矢巾町の県林業技術センターは、高級キノコとして知られるアミガサタケの人工栽培に成功した。屋外栽培で今春初めて地上から子実体が顔を出したのを確認し、安定的な生産へ期待を膨らませている。国内で流通しているのはほとんどが輸入物のため、将来的に県内で栽培を推進し、生産者らの収入向上や地域振興につなげたい考えだ。

 同センターによると、アミガサタケはフランス料理や中華料理などで使われる香り高い高級食材で、県内でもレストランなどで使われ始めている。春先から初夏にかけて民家付近など身近な場所に発生するキノコで、黒色型と黄色型に大別され、全体では数十種類あると考えられている。

 同センターは2018~19年にかけ、国内93カ所から277本のキノコを収集。この中から菌糸を分離し、岩手生物工学研究センターの協力を得てDNA解析を行い、中国の栽培種に近い菌株を選定し、候補株の栽培試験を行った。

 同センターの敷地内の畑に20年3月、9菌株の菌糸をまいた結果、今年4月、中国での栽培種に近い国内産黒色型から分離した菌株から3本の子実体の発生が確認された。

 世界的な産地の一つ、中国雲南省と本県が友好交流協定を締結したのをきっかけに、16年度からアミガサタケの栽培技術や研究に関して交流が進められている。今年4月には同センターと雲南農業大との間で、アミガサタケの育種と栽培に関する共同研究が開始された。

 今後、キノコ発生の再現性確認やパイプハウスによる栽培試験、県内企業と共同した栽培試験などに取り組み、安定生産に道筋を付けたい考えだ。

 同センターの成松眞樹上席専門研究員は「国内産の菌株を使い、県内で人工栽培に成功した意義は大きい」と強調した上で「栽培には夏は暑過ぎず、冬は温暖な沿岸部の気候が適しているため、東日本大震災からの復興への貢献も含めて沿岸部での振興を目指し、さらに研究を進めたい」と話している。

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