島を二分した住民投票を経て日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)に陸上自衛隊の駐屯地が開設されてから5年がたった。周辺海域で中国が動きを活発化させる中、南西地域の防衛力強化の一環として配備された自衛隊の存在は島の住民に浸透し、反対の声は薄れつつある。
那覇空港から直行便で約1時間半。与那国島は台湾から東約110キロに位置する。コンクリートや赤瓦の民家が並ぶ集落前の港に子供たちの遊ぶ声が響き、島内の牧草地や道路を在来馬の「与那国馬」が悠然と歩く。「自衛隊基地反対 島の元気をみんなでつくろう」。中心集落の一角に残る立て板の「反対」の文字は消えかけていた。「反対を呼び掛ける他の横断幕やのぼりは全てなくなりました」。集落で民宿を営む狩野史江さん(61)が語る。
2015年2月の住民投票では自衛隊配備への賛成が632票で反対445票を上回った。政府は配備計画を進め、16年3月28日に陸自与那国駐屯地を開設し、約160人で構成する沿岸監視隊を置いた。島の北約150キロにある尖閣諸島(沖縄県石垣市)の周辺海域では中国公船が領海侵入を繰り返しており、レーダーなどで船舶や航空機の動きを監視している。
「地域貢献」実感、残る警戒感
島には隊員とその家族で200人以上が移住。約1500人だった人口は約1700人に増え、自衛隊関係者は人口の約12%を占める。町の要望に沿って、家族を持つ隊員の宿舎は島内の3集落に分散して建設された。隊員らは豊年祭などの祭事や地区対抗駅伝などにも参加。減少が続いていた町立小中学校の児童・生徒数も約50人増え、駐屯地内には町民が利用できるグラウンドも整備された。「地域に対する貢献度はかなり大きい。『反対』とは表だって言いづらい」。配備に反対した町議は漏らす。
町の財政も潤った。駐屯地となった町有地の賃貸料が年間約1500万円入り、小中学校の給食費は無償化された。工事が進むごみ処理焼却施設の建設費約24億円は防衛施設周辺対策事業として国から9割の補助を受ける。町民税も年約5000万円増えた。誘致を求める署名活動などを受けて09年に防衛省に配備を要請した外間守吉(ほかましゅきち)町長(71)は「町の活性化につながっている」と胸を張る。
一方で「経済への波及効果は限定的だった」との声も聞かれる。自衛隊配備を推進した町の商工会長、崎原…
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