- [PR]
ライフ
秘密保持体質が見え隠れ 故人にノーベル賞授与
3日発表のノーベル医学・生理学賞で、規約に反して、故人のラルフ・スタインマン教授の受賞が発表されたハプニング。背景には、選考委員側の単純な確認不足に加え、賞の権威を維持させようとするノーベル財団の徹底した秘密保持体質も見え隠れする。
故人の受賞をめぐっては過去には、文学賞や平和賞で授与されたケースがあったが、1974年の規約改定で、発表後に死去した場合を除き、故人には授与しないことが決められた。にもかかわらず今回、9月30日に死亡したスタインマン教授の受賞が発表された。ノーベル賞(物理学賞)の推薦人を6年間務めた経験がある、早稲田大学の大槻義彦名誉教授は「生きていると思いこんだ単純ミスの可能性もあるが、賞の権威を維持するための徹底した秘密保持体制も背景にある」と指摘する。
大槻名誉教授によると、ノーベル賞の選考は、推薦人の元に毎年3月ごろに必要書類が届くところから始まる。各国の推薦人は5月ごろまでに同財団に書類を記入して返送。発表前日までに3組(人)の候補に絞られる。そこから実際の受賞が決まるのは、発表の約2時間前だという。
選考はごく少数のみで行われ、作業状況は、推薦人にさえも一切伝えられず、秘密保持が徹底される。大槻名誉教授は「余計な情報が選考に影響を与えるのを恐れ、推薦人は(選考委員らに)接触せず、死亡した情報も伝えない」と話す。選考委員らも、家族や関係者への接触を避けるため、「逐一、生死の確認もせず、(故人を選ぶ)規約違反が起きた」という。
今後は、インターネットの活用など、関係者との非接触での情報確認が徹底される可能性がある。大槻名誉教授は「もうミスは起きないだろう。ただ、規約が守られていれば、別の人が選ばれ、日本人受賞者の可能性もあっただけに、非常に残念だ」と話している。
関連ニュース
- [PR]
- [PR]