日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
Print ISSN : 0021-4930
ISSN-L : 0021-4930
所謂“ホタルエビ”の原因はルミネセンス産生性のVibrio cholerae non-O1である
島田 俊雄荒川 英二伊藤 健一郎小迫 芳正沖津 忠行山井 志朗西野 麻知子中島 拓男
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 50 巻 3 号 p. 863-870

詳細
抄録

1994年7月,琵琶湖の生け簀で青白く光るスジエビ(所謂ホタルエビ)が大量に発見され新聞やテレビで報道されるなど注目された。採取後発光したスジエビは次第に衰弱し,その殆どがその日のうちに死亡した(所謂エビの伝染性光り病)。死んだエビの甲殼から発光細菌が分離された。
同一のエビから分離された発光性4菌株は,TCBS寒天培地上で白糖非分解性の青色集落,PMT寒天培地上ではマンノース分解性の黄色集落を形成し,無塩ブイヨンおよび42°Cで発育した。トリプトソーヤ寒天およびブイヨンで,22°C培養で最も強い発光が見られたが,30°Cでは弱かった。これらの菌株はその形態・生理・生化学的性状がVibrio cholerae non-O1またはVibrio mimicusに類似していたが,その代表株(838-94)によるDNA相同性試験ではV.choleraeの基準株(ATCC14035)と高い相同性(79%)を示したが,V.mimicusのそれとは低い相関しか認められなかった。従って,これらの分離菌株はルミネセンス産生性V. cholerae non-O1と同定され,またその血清型はいずれもO28と型別された。一方,該菌株はコレラ毒素(CT)を産生せず,またCTおよびNAG-STのいずれの遺伝子も保有していなかった。

著者関連情報
© 日本細菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top