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東映作品はその歴史が示すとおりたくさんあります。その中で一番のお気に入りは? と聞かれたら、みなさんはどの作品のどのエピソードを選びますか? 作品の数、エピソードの数だけみなさんそれぞれの熱い想いがあると思います。今回はこの方の熱い想いをうかがいました。




 一千数百本の担当作品の中から、記憶に残る作品、好きな作品を選んでくださいとのことですが、実のところ大変迷いました。どの作品にも愛情がありますし、楽しい思い、辛い思い等が甦り少々時間が掛かり、手間取りました。

【profile】すずき・たけゆき=東京都出身。1968年東映株式会社へ入社。『がんばれ!!ロボコン』『アクマイザー3』や、スーパー戦隊シリーズなどの実写のほか、『闘将ダイモス』『サイボーグ009』などのアニメーション作品をプロデューサーとして手がける。現在、東映株式会社テレビ第二営業推進部長。

放映:1985年2月2日〜1986年2月22日、全55回
剣飛竜(チェンジドラゴン):浜田 治希
疾風翔(チェンジグリフォン):河合 宏
大空勇馬(チェンジペガサス):和泉 史郎
渚さやか(チェンジマーメイド):西本ひろ子
翼麻衣(チェンジフェニックス):大石 麻衣
伊吹長官:藤巻 潤




 1970年代後半、実写特撮ヒーロー作品のテレビシリーズの本数が一気に減り始めました。アニメブームの到来でした。その時期に、私は「アクマイザー3」「超神ビビューン」等の実写を担当しておりましたが、アニメーションを担当することになり、本意ではありませんでしたが、実写作品に戻ることを視野に入れ、逆に勉強する良いチャンスではないかと考え、実写の経験をアニメに活かそうと、色々なことにチャレンジしてみました。

 「闘将ダイモス」のロボットアクションでは、実写のアクション監督に殺陣をつけてもらったり、「サイボーグ009」では実写の音響演出の方に担当してもらったりと、様々な冒険をやってみました。やがてアニメの虜になっていくうちに、なぜ実写ものが急激に減ってしまったのか、一歩退いた外の世界からじっくりと見て、そして考えることができました。

 一番大きい要因は「古臭さ」でした。アニメ側から見ると、それが非常によく見えました。長年の実写の伝統的な作り方にあぐらをかき、改革に手を付けてこなかったことが、アニメのビジュアルな面、ストーリー展開の大革新に勝てなかったのです。私は、実写のデザインの古臭さ、一話完結に終始するストーリー展開、ヒーローに偏り、敵側に魅力を作らないやり方が見えてくると、早く実写に戻って、こういった問題に手を付けたくてうずうずしてきました。

 実写に戻り「サンバルカン」「ゴーグルファイブ」と色々悩み、模索する中、アニメ時代に知り合った時は未だ十代だった出渕裕氏と、いつかは一緒に実写をやろうと狙い続けていたことを、実現するチャンスがやって来ました。「ダイナマン」でした。出渕デザインは、その時はまだ荒削りなところもありましたが、若々しいデザインで、私の念願のキャラクターが出来上がりました。アニメでは出来るが、実写では無理と言われた美形キャラクターを作ることができ、出渕デザインは大変良い人気を博しました。 そして、「バイオマン」では、「ダークナイト」の成功の流れを活かした、「バイオハンター シルバー」のユニークな設定、デザインが人気を呼びました。もうこの頃、一話完結が主流だった実写物のストーリーも、年間の大きな流れを前面に出すストーリー展開へと、変化させていきました。

 そうした流れの中で、どうしても敵側、特に敵の女性がいまひとつ魅力的に作れず、そのことに腐心し続けていました。

 『チェンジマン』の企画が始まりましたが、悩みは続いていました。ここさえうまくいけば、「スーパー戦隊シリーズ」はある程度、自分の理想とした完成形に辿り着けるのではないかと考えていました。魅力的で、存在感のある敵女性幹部を企画する内、何故かこの女性幹部が死ぬ時は、最高の視聴率を取ろうではないか、と大胆な夢を持つようになりました。多分、私が若かったからでしょう。



かつては星王バズーと戦っていたこともあったが、アマゾ星再興のため地球攻略に加わった。当初アハメスはこの衣装だった。
(第17話登場)

リゲルオーラを浴びパワーアップしたアハメスは衣装のデザインも一新された。
(第33話登場)


 女王アハメスの設定は、類型をなるべく排除する方向で進めました。ただ美しいだけではなく、女王としての凛々しさ、聡明さを兼ね備え、その上アマゾ星を率いてゆく人間的な大きさが欲しい。勿論こういう役ですから、演技のしっかりした女優さんでなくては勤まりません。こうした厳しい条件のため、女優さんの選択には大変苦労しました。そんな中、時代劇で度々見かけ、気になっていた不思議な魅力を持った女優、特に時代劇ではあまり見かけないキャラクター黒田福美さんに、お会いすることになりました。大ベテランの打田輝子マネージャーから彼女の人となりを事前に聞いておきましたが、会った瞬間、彼女の持つ強烈なオーラにたじろぐと同時に、私の考えていた女王のイメージに、余りにもぴったりなのには驚きました。当時、時代劇の娘役が多く、新しい役に意欲的だった彼女に、ギリシャ悲劇の舞台に立った、大きな芝居をしてみませんか、との誘いに黒田さんは喜んで応じてくれました。話している間中、感じ続けたオーラを、何とか劇中に出せないかと、もう会っている間に考えました。(未だ、リゲルオーラまでは考えてはおりませんでしたが)それほどまでにインパクトのあるオーラでした。

 彼女の出演に喜んだ出渕氏の気合いの入れようは物凄く、大変素晴らしいデザインが上がり、私のボルテージも上がりました。アハメスの登場には、それなりの舞台が欲しくなりました。そこで第17、18話の登場篇を未だ建設中の「長崎オランダ村」を中心とした、春の長崎ロケという最高の舞台をセッティング、大スタッフで長崎ロケを敢行。予想通りのアハメスに感動、感動でした。登場後、不思議な宇宙獣士をくり出し、チェンジマンを痛めつけ、第32話では隠されていた女王の正体を出し、リゲルオーラを体に浴び、ついにスーパーパワーを手中に収める。女王の活躍はここに来て一気に増してくる。うねりを要所要所に散りばめることにし地球方面遠征軍司令官ギルークを追放し、新司令官となるや、ますます大活躍する。

 副官シーマ等に裏切られ、第53話「炎のアハメス!」ついには獣士にされてしまう。彼女の攻撃に後のないチェンジマンを救ったのは、伊吹長官だった。長官はヒース星人ユイ・イブキだった。これからが名場面。戦いの中で宇宙獣士メーズから分離したアハメスは何と狂女となり電撃戦隊の基地を次々と壊してゆく。狂女と化してもアハメスの心には、女王としての魂は生き続けていた。「星王バズー様、アマゾ星を返してください! 私の星アマゾ星を!」狂いながら、破壊を続ける哀しくも、恍惚としたアハメスの恐ろしいまでの美しさに一瞬息を飲みました。破壊の中アハメスは燃え盛る基地と共に消えていった。


星王バズーは、ついにアハメスまでもその光線で宇宙獣士メーズに変えてしまった。すぐさまメーズは電撃戦隊基地を発見。
(第53話)
パワーバズーカすら跳ね返してしまうメーズに苦戦するチェンジマンを救ったのは、伊吹長官だった。
(第53話)
アマゾ星復興を最後まで信じていたアハメスは、星王バズーの無情の仕打ちに涙しながらその最後を遂げた。
(第53話)
 ここまで、敵側の女性幹部を盛り上げることが出来るとは思いませんでした。沢山のスタッフの努力の成果だと今でも感謝しております。それに加えて、黒田福美さんの素晴らしい演技に大いに助けられました。満足のいく結果が得られ、目的は達成されました。

 視聴率は何と16.1%。「チェンジマン」の中で最高の数字を取ることが出来ました。ここまで視聴者に敵の女性幹部に関心を持っていただくことができ、感動しました。過去、色々とチャレンジしましたが、私には思い出がいっぱい詰まったエピソードです。


次はあなたの番です!


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