中国小売り大手の蘇寧、政府系基金が16%超出資
【上海=松田直樹】中国の小売り大手、蘇寧易購集団は6日までに、創業者らが保有する蘇寧株16%超を政府系ファンドが立ち上げた基金に約88億元(約1500億円)で売却すると発表した。基金にはネット大手のアリババ集団やスマートフォン大手の小米(シャオミ)なども参画する。蘇寧の業績は急速に悪化しており、大規模な資金調達で立て直しを急ぐ。
蘇寧の創業者である張近東・董事長(日本の会長にあたる)と関連企業は、蘇寧株を約4割保有する。このうち16.96%を江蘇省政府傘下の国有ファンドが立ち上げた基金に売却する。基金は政府系が55%出資し、残りをアリババや小米のほか、家電大手の海爾集団(ハイアール)、美的集団などが引き受ける。
蘇寧は3月、張氏らが保有する蘇寧株2割超を国有の物流大手に売却する方針を発表していたが、この交渉は打ち切られた。新たなパートナーとなった政府系の基金に16%超の株を譲るが、売却後も張氏やその関連企業は2割以上の株を保有し、経営権は引き続き創業家が握るとみられる。
基金に参画するアリババはすでに蘇寧株を2割弱保有している。今回は追加出資となり、小米やハイアールなどとともに、蘇寧の支援を強化する。ただアリババは蘇寧に16年に出資して以降、協業による目立った成果は少なかった。蘇寧の立て直しのため、今回の出資を機にアリババなどがどこまで経営に踏み込めるかがカギとなりそうだ。
蘇寧の経営は厳しさを増している。株式売却と合わせて2021年1~6月期の業績予想を公表し、最終損益は25~32億元の赤字(前年同期は1億6000万元の赤字)になったもようだ。本業の小売事業の売上高は前年同期比で3割超減っており、家電量販店やスーパーなど不採算店の立て直しが急務となっている。
蘇寧グループは東証2部上場の免税店大手、ラオックスや、イタリアの名門サッカークラブ、インテル・ミラノも傘下に持つ。今後の経営の行方次第では、こうした関連企業にも大きな影響を与える可能性がある。
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