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ガソリンスタンド、経営多角化に活路 高齢化、コロナ禍で需要減

2020年07月10日16時53分

 ガソリンスタンド(GS)業界が経営多角化を模索している。少子高齢化や新型コロナウイルスの流行で需要が落ち込む中、4月に消防法の規制が緩和され、敷地内で物品の展示販売などが可能になった。ただ、業界の大半を占める中小事業者は多角化しようにも資金力に乏しいのが実情。地域インフラとして欠かせないGSが苦境を乗り切るのは容易ではない。
 ◇需要減、一気に
 「コロナで需要減が一気に10年進んだ」。石油元売り各社で構成する石油連盟の幹部はこう肩を落とし、業界の先行きに危機感を示す。国内のガソリン需要は自動車の燃費性能向上や若者の車離れも要因となり減少カーブを描く。1994年度末に全国で6万強あったGS店舗数は2018年度末に約3万店と半減した。
 GS事業者で組織する全国石油商業組合連合会(全石連、東京)によると、緊急事態宣言が全国で発令された4月中旬から5月下旬のガソリン需要は前年同期比で約3割減少した。5月25日の宣言解除後、需要は持ち直してはいるが、感染第2波への懸念や在宅勤務の定着で車を使った移動は今後も控えられる可能性がある。
 石油連盟の杉森務会長(ENEOSホールディングス会長)は中長期的に見てガソリン需要が「コロナ前を上回ることは考えにくい」と表情を曇らせる。全石連幹部は「需要低迷が続けば、秋以降にGSの倒産が相次ぐ可能性もある」と話す。既に全国の事業者から資金繰りの相談が増えているという。

中古車の展示販売を始めた愛媛県西条市のガソリンスタンド(山内石油提供)

中古車の展示販売を始めた愛媛県西条市のガソリンスタンド(山内石油提供)

 ◇敷地を有効活用
 愛媛県西条市の山内石油は4月中旬から、3店舗のうち2店舗で中古車の展示販売を始めた。従来はオンライン販売が中心で、車両は別の場所で保管していたが、店舗に3台ずつを移動させた。経営者の山内章正氏(62)は「うちで車を買えることを知らない顧客も多い」と話す。車両展示を始めたところ、問い合わせは増加。自動車販売の利益は給油や洗車と比べて「桁違いに大きい」と指摘し「稼ぎ頭に育てたい」と力を込める。
 4月の規制緩和ではセルフ式GSで従業員がタブレット端末を使って給油装置を管理することも認められた。仙台市の事業者は試験的に1店舗で端末を導入した。従来は規制に対応して店舗内に管理担当の従業員1人を常駐させ、別の従業員も出勤してほかの業務を行っていた。今後は1人に兼務させ、人件費を削減したい考え。
 ◇存廃の岐路
 もっとも、システム導入には150万円程度の初期投資がかかるとされ、多角化に踏み出せるのは資金や人員に余力のある一部事業者に限られる。全国のGSの約7割は家族経営などの中小事業者で、業界関係者は「特に地方では小規模な業者が多く、経営も厳しい」と指摘する。日本全国に張り巡らされたGS網は存廃の岐路に立っている。

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