大相撲の「井筒3兄弟」の次男で人気力士だった元関脇逆鉾の井筒親方(享年58)の急死は、相撲関係者、ファンに大きな衝撃を与えた。気丈に振る舞って涙を誘ったのが、弟、錣山(しころやま)親方(元関脇寺尾・56)。17日、NHK大相撲中継の向正面解説として予定通り出演。「しょっちゅうけんかばかりしていたけど、尊敬していた」と故人を偲んだ。(塚沢健太郎)
錣山親方は17日、長兄の元十両鶴嶺山とともに都内の病院ですい臓がんで闘病していた井筒親方の最期を看取った。
「本当に頑張った。褒めてあげたい。最後まで顔を見られたことは幸せだった。小さいときから、しょっちゅうけんかばかりしていた。相撲に対しては天才。それをすごく尊敬していました」
錣山親方は、一夜明けたこの日、朝8時から9時半まで木戸番(チケットのもぎり)をこなした。両国国技館に近い井筒部屋の前には、早朝から多くの報道陣が集まっていたが、木戸番を終えた錣山親方が駆けつけ「家族だけでやりたいので、撮影と取材はこれで止めてください。弟としてお願いします」と何度も頭を下げた。
その後、午後4時前からNHK大相撲中継の向正面解説として予定通り出演。
「母親が亡くなったのは(1979年夏場所の)千秋楽で、私は高校生でしたが、兄2人は力士で、師匠であるおやじ(先代井筒親方、2006年死去)が『おまえらお客さんいるんだから(病院から)帰れ』と。そういう育ち方をしているので、井筒も納得してくれていると思います」と断るつもりはなかったと明かした。
さらに、NHKの解説を終えると、わざわざ国技館内の記者クラブに足を運び「本日はすみませんでした。いない方にも伝えておいてください」と、要望を受け入れて退散した報道陣に礼を述べた。ここにも錣山親方の人柄が表れている。
井筒親方の急死から一夜明けた17日、相撲協会は両国国技館で緊急理事会を開催。横綱鶴竜(34)ら師匠不在となった井筒部屋の力士3人と床山1人は、同じ時津風一門の長である鏡山親方(元関脇多賀竜・61)の鏡山部屋に一時預かりとなることを承認した。