中国政府、原発新設を再開 安全計画を承認、認可の凍結解除
【上海=土居倫之】中国政府は原子力発電所の新設を再開する。前提となる原子力関連施設の安全計画を承認した。昨年3月に日本で起きた福島第1原発の事故を踏まえ、中国政府は新規の原発建設の審査と認可を凍結していたが、安全検査などを通じて「国際的な安全基準を満たしていることが確認できた」と判断した。
中国は福島第1原発の事故を深刻に受け止め、原発や関連施設の安全検査を実施。この間はエネルギー政策における原発の位置づけを再検討するため、原発新設の審査などを見合わせていた。
中国では現在15基の原発が稼働中で、合計の発電能力は2011年末時点で1191万キロワットある。ほかに建設中の原発が26基ある。20年までの中長期計画の詳細は今後発表されるが、地元紙によると、20年までに発電能力は6000万~7000万キロワットに高まる見通しだ。
日本原子力産業協会によると、11年時点で原発による発電能力は米国の1億524万キロワットがトップで、フランスの6588万キロワットがこれに次ぐ。中国は10位だが、計画では20年までに日本を上回り、仏に匹敵する規模となる。
中国が原発の新設再開を認めた背景には、経済成長に伴うエネルギーの需要増への対応もある。現在は火力発電が全体の72%を占め、原発はわずかに約1%と風力発電より少ない。
石炭価格の高騰や二酸化炭素(CO2)の発生など環境問題で火力頼みには限界があり、中国国内では「福島第1原発の事故後も、エネルギー政策における原発の重要性は変わらない」(張華祝・中国核能行業協会理事長)との意見が目立っていた。