関西の議論

泳ぐイノシシ、琵琶湖にも…「源氏落ち武者の島」に渡って定住、深刻被害も打つ手なし

対策は地域ごとで、決定打はなし

 農林水産省は今年度の当初予算で、侵入防止柵などの整備やジビエの利用拡大など獣害対策に計104億円を計上。7年ぶりに増額させた。

 また、鳥獣被害防止特措法では、猟友会や農家などでつくった「鳥獣被害対策実施隊」に対し、捕獲や柵の設置などに報酬を支払う制度もある。

 ただ、離島に限定した対策はなく、同省農村環境課鳥獣対策室は「ソフト、ハードの整備への助成はできるが、罠(わな)の管理など継続した取り組みが必要で、地域の狩猟免許を持つ人や自治体が一体となった活動がのぞまれる」とする。

 離島のイノシシ対策としては、江戸時代に長崎県の対馬で行われた駆除作戦が知られる。対馬藩が農業振興のため9年間で約5千人を動員し、約8万頭を駆除した記録が残る。

 現代では、佐賀県の馬渡(まだら)島で箱罠を利用して平成24〜28年度に計257頭を捕獲した実績がある。ただ、高橋名誉教授によると、人口よりもイノシシが多くなった離島もあり、イノシシの増加ペースに追い付いていないという。

 檻に設置した監視カメラでイノシシを認識し、イノシシが入ったところで自動的に檻の扉を閉める最先端の駆除装置もあるが、高額な上、国の補助金交付先も農業被害の大きな地域に限定されている現状で、普及には至っていない。

 高橋名誉教授は、沖島のイノシシは現在、数頭から10頭程度と推測。「今捕獲できれば、被害拡大を食い止められるかもしれない」と話す。

 泳いで生息域を拡大するイノシシ。その対策が急務となっている。

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