インドの天然資源大手ベダンタ・グループは、EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手である台湾・鴻海精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)と協力して西部グジャラート州に半導体工場を建設する計画だ。インドでの半導体工場の建設は実現可能なのか。ベダンタ・グループの担当幹部はNNAとの単独インタビューで、「工場の建設は年内に始まる。設置場所は同州ドレラにほぼ決まった」と語った。
先月ベダンタ側とグジャラート州政府が半導体工場とディスプレー工場の設置で覚書を結んだ。投資額は1兆5,400億ルピー(約2兆7,800億円)。ベダンタ・グループとフォックスコンの合弁会社は、工場の設置場所を特定し、建設に向けて動いている。
一方、インドで初となる半導体工場の設置が実現可能なのか、技術力の不足などを懸念する声もある。ベダンタ・グループで半導体とディスプレー部門のグローバルマネージングディレクターを務めるアカーシュ・ヘバー(Akarsh Hebbar)氏は16日のインタビューで、工場設置に向けた準備について語った。
——工場建設の進捗(しんちょく)状況は。設置場所は決まったか。
場所はほぼ特定した。グジャラート州の主要都市アーメダバードから南西に約100キロメートルに位置するドレラに建設する見通しだ。
グジャラート州政府は非常に良い土地を提供してくれた。建設の第1段階では400エーカー(約162万平方メートル)の土地で整備を開始する。2022年内に起工式の実施を予定している。
——第1段階での投資予定額は。生産開始はいつになる予定か。
建屋全体の建設と工場の整備を25年までに完了させることを目指している。26年に向けて商業運転を開始する予定だ。
第1段階では、半導体工場とディスプレー工場を同時に稼働させるため、25年末までに120億米ドル(約1兆7,800億円)を投資する。内訳は、70億米ドルが半導体工場向け、残りの50億米ドルがディスプレー工場向け。工場に搬入する設備には30億~40億米ドルが必要になるだろう。
——ベダンタの持ち株会社であるボルカン・インベストメンツが工場建設の資金を提供する。資金繰りに不安は。
資金調達に問題はない。
——合弁会社は向こう2~3年で建設を完了させるためにどんな準備をしているか。
建設を担う建設会社と契約を交わし、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の設置を確認した。フォックスコンは建設に関わる人材の特定を進めている。現在は政府から複数の承認を待っている状況。政府は非常に協力的で、支援も得られるだろう。
——工場整備は400エーカーの土地で十分か。
最初の段階は400エーカーの土地で進めている。この土地面積は工場の設置には十分だ。ただ、ドレラ一帯でエコシステム(ビジネス生態系)を構築するためにはさらに2,000エーカーの土地が必要になるだろう。この事業は、韓国、日本、台湾、米国などに本拠を置く数百の企業を引き付けると予想している。
——合弁会社が生産する半導体が活用される業界は。
回路線幅が28ナノメートル(ナノは10億分の1)の製造プロセスで、12インチウエハーに対応する半導体を生産する。スマートフォン、家電製品、自動車などの幅広い業界の需要に対応する。
フォックスコンにとっても、グジャラート州での生産が将来的に事業の基盤になるだろう。同社はインドで半導体を調達できるようになり、合弁会社の顧客となる可能性がある。(聞き手=Atul Ranjan)