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スポーツ
【舞の海の相撲“俵”論】男気と大和魂
大学の先輩でプロ入り後も同門だった元小結両国が、境川部屋の前身に当たる中立部屋を起こしたのが平成10年春。現役時代の師匠だった元横綱佐田の山に出羽海部屋からの分家独立を拒否された場合、相撲界を去ってふるさと長崎に帰る覚悟を決めていた。
担保がなく、新たに部屋を建てたくても請け合ってくれる銀行はなかった。知人に借りた資材置き場を稽古場とし、急ごしらえの土俵でたった2人の弟子が四股を踏む光景を忘れられない。おかみさん、息子2人とともに錦糸町にある2DKのマンションで細々と共同生活を送る日々が続いていた。
なかば諦めかけていたところ、最後に訪ねた銀行で支店長に声をかけられた。「小林さんですよね?」。学生相撲のファンで親方の活躍をよく知っていた。弟子育成の熱意を正直に伝えると「私の責任で何とかしますよ」と言ってくれた。奇跡が起こった。
新興部屋としては、“米びつ”となる力士が1人でも多く欲しいはず。ところが新弟子を勧誘するため、地方に行ったときのこと。のどから手が出るほど欲しい若者が親に口答えする姿を見ると「お前のような親不孝者はこっちから願い下げだ」と帰ってくる始末。それでも各校の指導者は真摯(しんし)に弟子と向き合う親方にほだされ、自然と弟子が集まっていった。
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