「多通貨カード」で海外払い マイル獲得や手数料節約
海外での支払い手段に「多通貨カード」を利用する人が増えている。外貨預金を活用して10種類以上の通貨で支払える。両替の手数料を抑えられるうえ、利用額などに応じて航空会社のマイルを付与されたりキャッシュバックを受けられたりする。
10種類以上の通貨を取り扱い
「1週間のハワイ旅行の間、ホテルでチップを払う以外は紙幣や硬貨を使わなかった」。東京都の30代の男性会社員がハワイ旅行で決済に利用したのはSMBC信託銀行が10月に発行を始めた多通貨カード「GLOBAL PASS」(グローバルパス)だ。
グローバルパスは買い物などの支払時に、代金を預金口座から即時に引き落とすデビットカード。通常のデビットカードとの違いは外貨普通預金口座から引き落とす点だ。
外貨預金を海外での支払いに使えるデビットカードやプリペイドカードが増えている。最近は1枚で10種類以上の通貨を取り扱える「多通貨カード」が多い。
外貨預金を活用する大きな利点は両替にかかる為替手数料を抑えられることだ。ソニー銀行の試算によると、国内の両替所などでは米ドルを交換すると1ドル当たり3円、クレジットカードで支払うと2.2%分の手数料がかかる。一方、外貨預金は円から外貨に交換済みなので新たに手数料は発生しない。
低い為替手数料、普及を後押し
外貨預金は通常、運用目的にする人が多いが、こうした人たちが例えば年に1回だけ海外旅行をする際にも役立つ。さらに、多通貨カードの「原資」となる外貨預金にかかる手数料が、ネット銀を中心に低く抑えられていることも、普及を後押ししている。
外貨預金にかかる為替手数料は交換レートに含まれる。1米ドル当たりの場合、住信SBIネット銀行が2銭または4銭、ソニー銀は4~15銭。SMBC信託銀は1円だが、毎月1万円から定期的に外貨預金する「外貨積立サービス」なら円を外貨に替える際は無料だ。
このため、仮に外貨の残高が不足したり、対象の国・地域の通貨を預金・チャージしていなかったりした場合でも、各社は専用アプリや自行のサイトで為替レートを提示しており、現地の両替所と見比べて有利なほうを選べる。ソニー銀の加藤和彦タイアップ営業1部長は「幅広い国・地域で有利なレートで支払える」と強調する。
マイル付与やキャッシュバックも
手数料を抑える一方、多通貨カードでは利用額などに応じた還元に航空会社のマイルを受け取れるサービスにも力を入れ始めた。ソニー銀は9月から、国内の利用額や外貨預金などの残高に応じて全日本空輸(ANA)のマイレージ(マイル)がたまるデビットカードの取り扱いを開始。SMBC信託銀は、海外での支払いやATMからの現地通貨引き出しなどに応じてANAのマイルを付与するデビットカードも取り扱っている。
マイルでの還元で先行したJALグローバルウォレットも利便性を高めている。住信SBIネット銀の外貨預金からのチャージ手数料を11月から無料にし、少額からのチャージもできるようにした。米ドルは1回当たり2000ドルずつで手数料も33ドルだったが、10ドルずつで無料に変えた。
また、SMBC信託銀やソニー銀のデビットカードは、海外や国内の加盟店での利用額に応じてキャッシュバックするなど、多通貨カードの還元策は多様化している。
通貨が使えない国・地域、手数料上乗せも
注意したいのは、取り扱っている通貨がそもそも使えない国や地域で支払ったりした場合、各行の外貨預金のレートではなく、マスターカードやVisaなど国際ブランドの定めるレートに2~4%程度の手数料がさらに上乗せされる点だ。条件は各カードごとに異なるので事前に確認しておこう。
また、利用したい通貨の取り扱いの有無や、ためたい航空会社のマイルで多通貨カードを選ぶだけでなく、そのほかのサービスや特典も含めてカードを選んだり使い分けたりしたい。
(藤井良憲)
[NIKKEIプラス1 2019年11月23日付]
個人は外貨投資をどのように考えればいいのか、足元で為替の動きが激しいなか基本的な考え方を押さえておきましょう。外貨投資には金利の他に為替の先読みや「どの国・地域に投資するか」という要素が加わります。しっかり学んでから始めましょう。
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