日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P109
会議情報

一般演題 ポスター
ETBE慢性吸入曝露によるAldh2遺伝子ノックアウトマウスの肝臓DNA損傷について
*翁 祖銓須田 恵大谷 勝己王 瑞生
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)はバイオ燃料として今年から本格的に導入される。ETBEの肝臓影響について,高濃度 ETBEの慢性曝露後,動物肝臓の重量増加や肝細胞肥大が観察されたが,それ以外の影響の報告はない。体内でETBEからアセトアル デヒドなどのアルデヒド類が作られる。これらの中間代謝物は毒性の可能性があり,特にアセトアルデヒドは潜在的な発がん物質とし て分類されている。一方,東アジア人の約4割はアルデヒドを解毒する酵素(ALDH2)の活性を欠損している。本研究では,ALDH2活 性欠損のモデルとしてALDH2遺伝子ノックアウトマウスを使用し,肝臓細胞DNAの早期損傷を評価した。「方法」C57BL/6系野生型と そのALDH2遺伝子ノックアウトマウス(KOマウス)に0,500,1750と5000 ppmのETBEを,6時間/日,5日/週,13週間曝露させ た。最終曝露の終了20時間後,肝臓組織を採集し,ホモジナイズしたのち,コメットアッセイ法でDNA損傷を解析した。DNA損傷度 はテールインテンシティ(tail intensity, TI)を使用した。「結果」雄マウスにおいて,野生型の非暴露群と比べて,野生型の高濃度暴露 群のTI値は有意に上昇した。一方,KOマウスは,低,中,高濃度のいずれの曝露群においてもTI値は有意に上がった。また,KOマウ スの低,中濃度暴露群は,対応する野生型マウスの曝露群と比べて,それぞれ有意に高かった。KOマウスの中濃度と高濃度曝露群の TI値は,非曝露群との間に有意差が認められたが,低濃度暴露群はその差に有意差がなかった。雌マウスについては解析中である。「結 論」ETBE慢性曝露は肝臓細胞のDNA損傷を誘発することが判明され,またこの影響はKOマウスにおいてより大きかった。「謝辞」本研 究には(株)アニマルケアの渡辺智子氏の協力を賜った。

著者関連情報
© 2010 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top