鴻海中国工場、再び過重労働か アマゾンが是正求める
【台北=伊原健作】人工知能(AI)を搭載する米アマゾン・ドット・コムのスピーカー「エコー」を巡り、製造を担う台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の中国工場で過重労働が行われた問題が持ち上がっている。アマゾンは既に鴻海に是正を求めた。鴻海は11日、労働環境について全面的な調査に着手しており、問題が見つかれば是正するとの声明を出した。
米ニューヨークを拠点とする「チャイナ・レイバー・ウオッチ」が10日付リポートで指摘した。「エコー」を生産する鴻海の衡陽工場(中国湖南省)を9カ月間にわたり調査。一部の労働者が1カ月の時間外労働を計36時間までとする中国の労働法に反し、月80時間以上などを要求されるケースが見つかった。安全訓練が十分でないことなども問題としている。
リポートはアマゾンとの書面での詳細なやり取りを添付。アマゾンは3月の監査でこうした問題を認識した。鴻海に対し即座に是正して改善策を取るよう求めていた。
ジェフ・ベゾス創業者兼最高経営責任者(CEO)は昨年、世界富豪ランキングで首位に立った。米ブルームバーグは「低賃金の労働者の背後で世界一の金持ちになったとの批判を抑えようとしている」などと報じた。 鴻海は11日の声明で「顧客などに関する市場の噂にはコメントはしない」としつつ、「(労働環境を)全面的に調査し、誤りがあれば改善する」と表明した。
鴻海を巡っては17年11月にも、米アップルのスマートフォン(スマホ)、iPhoneを生産する中国工場で、学生が過重労働を余儀なくされていたことが判明した。中国では高学歴化などで労働力不足が進む。製造業は安価な労働力を確保しようと腐心するが、公正性や人権への意識が一段と問われるようになる。