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【新薬】過活動膀胱治療薬
デトルシトール、ベシケア:膀胱選択性を高め副作用を軽減

2006/06/22
北村 正樹=慈恵医大病院薬剤部

過活動膀胱治療薬「デトルシトールカプセル」(輸入・販売:ファイザー)

過活動膀胱治療薬「デトルシトールカプセル」(製造・販売:ファイザー)


過活動膀胱治療薬「ベシケア錠」(製造・販売:アステラス製薬)

過活動膀胱治療薬「ベシケア錠」(製造・販売:アステラス製薬)

 2006年4月、2種類の過活動膀胱治療薬が同時に承認され、薬価収載の後、どちらも6月8日に発売された。「デトルシトール」(一般名:酒石酸トルテロジン)と、「ベシケア」(一般名:コハク酸ソリフェナシン)である。2剤ともムスカリン受容体拮抗作用を有する排尿障害の治療薬であり、欧米を中心とした世界各国で既に発売され、実績を上げている。

 排尿障害は、頻尿・尿失禁を主訴とする「蓄尿障害」と、前立腺肥大症などによる「排出障害」に大別される。このうち排出障害には、原因となっている前立腺肥大症などに対する基本治療を行うとともに、副交感神経作用を増強させるコリン作動薬やアドレナリン受容体作動薬が中心的な薬剤として使用されている。一方、蓄尿障害では、排出障害とは逆に交感神経作用を増強させる抗コリン作用を有する薬剤(抗コリン薬)が有効で、主にムスカリン受容体拮抗薬が使用される。ムスカリン受容体拮抗薬としては、これまで塩酸プロピベリン(商品名:バップフォーほか)、塩酸オキシブチニン(商品名:ポラキスほか)が使用されてきたが、ここに新たにトルテロジンとソリフェナシンの2剤が加わったことになる。

 今回承認された2剤とも、新発売に当たって認められた適応症は「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁」である。過活動膀胱とは、2002年国際禁制学会(ICS)で定められた新しい疾患概念で、「尿意切迫感を有し、通常は頻尿と夜間頻尿を伴うもの。切迫性尿失禁の有無は問わない」と定義されている。具体的には、急に強い尿意を感じて尿が漏れてしまったり、排尿回数が通常より多い症状を示す病態を指す。2002年に日本排尿機能学会が行った「排尿症状に関する疫学調査」では、この定義に該当する過活動膀胱の患者が、40歳以上の 12.4%、810万人に達すると推定されている。しかし、まだ病名や症状に対する認知度が低いこともあり、受診率は2割程度にとどまっているのが現状である。

 尿失禁などと同様、過活動膀胱に対しては、膀胱の過敏性を緩和する意味でムスカリン受容体拮抗薬が有効であるが、全身性の抗コリン作用による便秘、口が渇く、まぶしさ、尿の出が悪いなどの副作用が問題になる。その点、トルテロジンとソリフェナシンは、従来の抗コリン薬に比べて、こうした副作用が少ないことが報告されている。これは、これら薬剤のムスカリン受容体拮抗作用が膀胱選択的であるためと考えられている。

 もっとも、抗コリン薬特有の副作用は、トルテロジンやソリフェナシンでも少ないとはいえ皆無ではないので、特に投与開始初期は注意しておきたい。また使用に当たっては、事前に過活動膀胱類似の症状を呈する疾患(尿路感染症、尿路結石、膀胱癌や前立腺癌などの下部尿路における新生物など)を尿検査などで除外する。前立腺肥大症など下部尿路閉塞疾患を合併している患者には、それに対する治療(α1遮断薬の投与など)を優先させなければならない点にも留意したい。

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