米航空宇宙局(NASA)の火星探査機「インサイト」が、火星の地震を初めて観測した。何千万kmも離れた地球の地震学者たちがこの発見に沸き立ち、火星研究は新たな時代に突入した。
4月6日に記録されたかすかな震動は、風などによる地表の揺れではなく、火星の内部から来たものだと考えられている。地震によるものだとすれば初の記録であり、研究者たちは震動の原因を正確に特定すべく、引き続きデータを解析している。
検出された地震波はかなり小さく、マグニチュード2~2.5に相当する。地球の地震であれば、地表ではかろうじて知覚できる程度の揺れだ。しかし、2018年12月に火星表面に地震計を設置し、数週間前から正式に観測を始めていた科学者にとっては、この小さな震動には非常に大きな意味がある。(参考記事:「火星着陸へ、NASAの探査機インサイトを解説」)
「最初の1カ月は、『まだ大丈夫、問題なし』と見守っていました」とNASAのインサイト・ミッションの主任研究者ブルース・バナート氏は語る。「2カ月目になるとさすがに、『いつでもいいぞ、さあこい、早く見せてくれ』という気持ちになっていましたね」
「昼も夜も、暇さえあればメールをチェックしていました」と打ち明けるのは、NASAのマーシャル宇宙飛行センターの惑星科学者でインサイトの共同研究者であるレネ・ウェーバー氏だ。「毎朝、目が覚めるとベッドの中でスマホを見て、『今日こそ最初の地震をとらえる日になるかもしれない』と期待しながら出勤するのです」
インサイトの着陸から128火星日(131地球日)後、ついにかすかなシグナルが届いた。研究チームは早速、解析に取りかかり、地震である可能性が十分に高いと判断した。「チームからは安堵のため息が出ました」とバナート氏は振り返る。(参考記事:「火星に着陸成功、探査機はこれから何をする?」)
「私は約30年間も火星の地震を追いかけてきました」と彼は言う。「私にとって、研究生活の頂点といえる瞬間でした。1980年代から夢見てきたデータが、ついに手に入るようになったのです」