2014.11.14
# 雑誌

『マッサン』人気を引っ張るのはこの男 堤真一が演じる「鴨居の大将」本物はもっと豪快だった! サントリー創業者・鳥井信治郎

〈醒めよ人!舶来盲信の時代は去れり〉。日本初の国産ウイスキー「サントリー白札」の謳い文句である。創業者を駆り立てたのは、「日本人が西欧人に劣るはずがない」という強烈な自負心だった。

日本初のヌード・ポスター

「一緒にウイスキーつくろ?今の日本ではあかんかもしれへん。そやけど、何年か後の未来には必ずこの日本にもウイスキーの波が来る。わてらがその波、つくるんや」

静かに、しかし熱を込めて亀山政春(玉山鉄二)を誘う男。鴨居欣次郎(堤真一)である。

コテコテの関西弁を使い、白い麻シャツにチョッキを着込み、ピカピカの自転車にまたがって大阪の下町を颯爽と駆け抜ける—。平均視聴率20%を超えるNHKの朝ドラ『マッサン』の人気は、今、間違いなく、鴨居の豪放磊落なキャラクターが引っ張っている。

コラムニストの泉麻人氏も鴨居の登場でドラマにより惹きつけられた一人だ。

「近年のNHKの朝ドラは脇役にも光る人が多いですね。前作『花子とアン』の吉田鋼太郎や高梨臨、今回の鴨居役の堤真一もそうです。堤は兵庫県西宮市の出身らしく、関西弁の芝居が板についている。花登筺さんが脚本を書いた'70年代のドラマ『どてらい男』のような、ひと昔前の喜劇のニオイがします」

マッサンこと主人公の亀山政春は、ニッカウヰスキーの創設者・竹鶴政孝がモデル。ドラマでは現在、マッサンは日本初となるウイスキーづくりの実現に向けて、四苦八苦している。そこで出会ったのが、「鴨居の大将」と呼ばれる鴨居欣次郎だった。「太陽ワイン」なる商品を手がける鴨居商店の社長だ。その人物のモデルは当時の寿屋、現在のサントリーの創業者、鳥井信治郎である。

鳥井は明治12(1879)年、両替商の息子として大阪市内で生まれた。商家の慣習として、13歳で薬種問屋や染料問屋に丁稚奉公に出る。そこで当時は薬として飲まれていた洋酒に触れ、また香料の調合の技術を身につけた。

20歳で独立し、鳥井商店を開業。葡萄酒の製造販売を始める。明治39年に社名を「寿屋洋酒店」に改め、翌年に「赤玉ポートワイン」を発売し、これまでにない葡萄酒を世に問うたのだ。

この商品を売るために、鳥井信治郎は前代未聞の広告戦略を打つ。ドラマでのこのシーンをご記憶の方も多いはずだ。

料亭の一室。細く開けた襖越しに若い女性を見つめる鴨居とマッサン。鴨居商店の新しいポスターの撮影だった。モデルは着物をはだけ、両肩を露にする。しかし、鴨居は満足しない。そこで、モデルのみどり(柳ゆり菜)が言う。

「大将、なんやったら、わたし、全部脱ぎますよ」

大胆な提案にマッサンは仰天するが、鴨居は即座に応じる。

関連記事