台湾の加入申請で過熱するTPP 中国「断固反対」 加盟11カ国に難題

2021年9月23日 21時12分
蔡英文氏(AP)

蔡英文氏(AP)

 【北京=白山泉】中国に続き台湾が22日、環太平洋連携協定(TPP)への加入を申請した。中国は「1つの中国」の原則に基づき台湾の申請に反発。アジア・太平洋地域の通商協定は今後、中台対立の主戦場と化す。日本を含め新規加入の鍵を握る加盟11カ国は、中台双方をにらみ難しい判断を迫られる。
 台湾の蔡英文さいえいぶん政権は2016年の発足直後からTPP加入の準備を進めてきた。蔡氏は23日、ツイッターで「台湾のTPP参加は経済の発展を強化し、世界の人々に利益をもたらす」と訴えた。
 16日には、20年にTPPの参加意欲を明らかにした中国が台湾に先駆けて加入を申請。仮に中国が先に加入を果たした場合、台湾側には加入を阻まれるとの危機感が強い。
 台湾の国際活動に一貫して反対している中国外務省は、23日の会見で「いかなる協定だろうと台湾の加入には断固反対だ」とTPP加入申請を非難した。
 中国は世界第2位の経済規模を武器に、国際秩序の形成において発言力を強めようとしている。中国紙・環球時報は中国のTPP加入について、「アジア・太平洋の国家に巨大なビジネスチャンスとなる」と強調。中国が加われば、TPP参加国の世界の国内総生産(GDP)に占める割合は13%から約30%に拡大し、総人口は4倍の20億人(世界人口の4分の1)になるとアピールした。東南アジアとのサプライ・チェーンのつながりも深く、タイも中国の加入に関心を示している。
 ただ、中国のTPP加入には、知的財産権の保護や国有企業の優遇制限などルールの順守が不可欠。労働組合の結成や国境をまたぐデータ移動の自由化なども含め難題が山積する。一方、台湾の蔡氏はツイッターで「全てのルールを受け入れる用意がある」と自信を示し、TPP議長国の日本に支持を呼びかけた。
 米バイデン政権は、中国の加入申請後もTPP復帰には慎重な姿勢を保っている。ただ、日米豪印による「クアッド」など安全保障の枠組みを通じて、日本やオーストラリアに中国への圧力強化を求めてくる可能性もあり、経済と安全保障のはざまで難しい駆け引きが求められそうだ。

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