荒川区議・夏目亜季氏、23歳で子宮頸がん「政治家アイドル」がワクチン接種とがん検診の大切さ「伝えていかなきゃ」

スポーツ報知
夏目亜季氏

 アイドルで東京・荒川区議の夏目亜季氏(32)が「逆境力~難病、子宮頸がんを乗り越えアイドルから政治家へ~」(日本橋出版、1540円)で自身のがんの闘病記や政治家になった経緯をつづっている。子宮頸がん予防のための「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン」の接種率向上と、がん検診の参加率向上に区議として取り組んでいる夏目氏。「接種の大切さを伝えていかなきゃならない」と力を込めた。(太田 和樹)

 ふりふり衣装で歌って踊ってファンを喜ばせるアイドルと、ジャケットを着こなして議会で質問をぶつける区議としての活動。夏目氏は二足のわらじをはく“政治家アイドル”だ。高校時代はAKB48全盛期。推しメンは、たかみなこと高橋みなみだった。アイドルになるため、20歳で京都から上京したが、23歳に子宮頸がんが判明。「まさか自分がこの若さでなるなんて」。青天の霹靂(へきれき)だった。

 子宮頸がんはリンパ節に転移しており、ステージ3の段階だった。抗がん剤と放射線治療で様子をみて、効果が出てきたところで子宮頸部に直接放射線を照射する。膣(ちつ)内にアプリケーターのようなものを挿入するが「ぼうこうとかを傷つけないために綿を詰め込むんです。看護師さんとかにも手を握られて息を整えながらじゃないと痛すぎてなかなか入っていかなくて。それに1時間とかかけて、ゆっくり入れるんですよ。綿も痛いんですけど器具も痛くて」と壮絶な治療体験を振り返った。

 治療が行われたのは、出産の時に使う分娩(ぶんべん)台の上。「普通の人ならこの体勢になって子どもを産むのに、自分は器具をがんを治すためだけに入れて、どんどん卵巣とか機能を壊していくんだな。がんの治療ができる喜びもありましたけど悲しさとかつらさというか、痛みとともに治療を受けていました」

 厚生労働省は4月から子宮頸がんを予防するHPVワクチンの積極的接種勧奨を再開。副反応や後遺症などへの懸念から約8年間勧奨が中断され、先進国では異例の低接種率だった。

 「将来5~8割の女性がHPVに感染するんです。接種の大切さや安全性を伝えていかなきゃならない」。放射線治療により出産は諦めたからこそ、HPVワクチンの接種率向上と、がん検診の参加率向上は区議としての「使命」だと夏目氏は考えている。

 ◆夏目 亜季(なつめ・あき)1990年10月26日、京都・舞鶴市生まれ。32歳。京都・西舞鶴高卒業。17歳の時に国指定の難病で、発疹(ほっしん)や発熱、関節痛などを引き起こす「全身性エリテマトーデス」を発症。2011年、20歳の時に上京しアイドル活動を開始。14年に「また会おう」でCDデビュー。同年に子宮頸がんが判明、15年に寛解した。19年に荒川区議選に初出馬し当選した。

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