讃岐うどん遍路

うどんコラム

これであなたもうどん通!
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湯だめうどんと釜揚げうどん

 讃岐うどんは粉を塩水で捏ねて踏んで延ばして切ってゆでて、ゆで上がった麺 を水で洗ってピシッと締めていわゆる"うどん玉"ができあがり、それにダシや トッピングでいろんなメニューにするわけだが、この製法から行くと一つだけ、 種類の違うメニューがある。それは「釜揚げうどん」である。すなわち、釜の中でゆで上がった麺をそのままゆで湯と一緒に取ってつけダシで食べる釜揚げうどんは、最後の「水で締める」という工程をやっていないうどんなのだ。

 水で締めたうどんを熱い湯に入れてつけダシで食べるうどんは「湯だめうどん」と言う。釜揚げうどんと湯だめうどんはどちらも「熱い湯に入ったうどんを つけダシで食べる」ので初心者には一見同じように見えるが、釜揚げは水で締めていないうどん、湯だめは水で締めたうどんという違いである。食感は、一般的にはそりゃ釜揚げの方がいい。湯だめは作り置きしてコシがなくなった麺を湯に 入れてもできるからなあ。

 で、香川県外で「釜揚げうどん」を頼むと、いちいちゆでるのがめんどくさいからか、水で締めて作り置いたうどんに湯を張って「湯だめ」を「釜揚げ」と言って出してくる店がある(香川県内でも発見されている)。釜揚げと湯だめは、 見ただけでほぼ判断できる。釜揚げの湯はにごっている。湯が透き通っていれば、たいてい湯だめだ。中には水で締めたうどんにわざわざ釜のにごった湯を入れるという手の込んだインチキをする店があるが、それでも麺を食べればすぐわかる。麺がツルツルなら湯だめ。釜揚げの麺は、表面が溶けかかっているみたいな"危うさ"がある。それがうまいのである。

ぶっかけうどんの定義

 「ぶっかけうどん」というメニューがあちこちのうどん店でみられるが、「どういううどんを"ぶっかけうどん"と言うのですか?」という質問に答えられる人はほとんどいないでしょう。だって、店によって形態がバラバラなんだもん。 錦糸卵や千切りにしたキュウリ、ハム、シイタケなど、まるで冷麺の具が乗ったような豪華なぶっかけうどんから、うどん玉にネギと天かすとショウガくらいが乗ってダシをチャッとかけただけの間に合わせみたいなぶっかけまである。したがって「何が乗っているか」では定義できない。麺でも他のうどんと区別できない。ダシも、特製のぶっかけ用ダシを作っている店もあれば、普通のかけうどんのダシをかけるぶっかけうどんもある。

 唯一、ほぼすべてのぶっかけうどんに共通する特徴は「ダシがちょっとしかか かっていない」という点である。ま、讃岐うどんはだいたいでいいんじゃないでしょうか。

ざるうどんの長さ

 「ざるうどん」というネーミングは故大平元首相が名付けたと言われているが、「いや、うちが先につけた」といううどん屋の大将もいて、どうも定かではない。ま、そんな話ではないんですが、ざるうどんを食べる時の一番の問題は、食べている人はほとんど誰も口にしないが(うどんは口にするが)、「長すぎて 往生しまっせぇ(こだまひびき風に)」である。観察の結果、あの長いうどんを 食べるのに、こういうタイプの客たちがいることがわかった。

・最初に箸でつかんだ麺をダシのコップにズルズルと引きずり込んで、全部入れたところで食べる。時々麺が多すぎてダシがあふれそうになる。
・最初に箸でつかんだ麺をダシのコップにズルズルと引きずり込みながら、適当なところで箸で麺を切る。時々うまく切れなくて左手で箸の先もつまんで両手で切ったりする。
・最初に箸でつかんだ麺をダシのコップにズルズルと引きずり込みながら、途中でそのまま(麺の先がダシの中、後ろがざるの山の中の状態で)食べ始める。
・最初から箸で麺を1〜2本くらい少な目に取り、麺を持ち上げて一旦卸してその麺の先の方を一緒につかみ直して麺の山から抜いてダシにつけて食べる。
・とにかく立ち上がってでも麺を抜いて食べる。

 これはもう、「どうやって食べなさい」という話ではない。とにかく「もっと短い麺を作ってくれ」と言いたい。ちなみに「わら家」のざるは麺が結構短めで食べやすいです。

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