ガザの人道危機へ懸念強まる イスラエルが水・食料を遮断、EUは「国際法違反」の認識

イスラエル軍の空爆を受け、パレスチナ自治区ガザ南部ラファから上がる煙=12日(AP=共同)
イスラエル軍の空爆を受け、パレスチナ自治区ガザ南部ラファから上がる煙=12日(AP=共同)

【ニューヨーク=平田雄介、ロンドン=黒瀬悦成】イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザの封鎖に対し、一般住民への支援物資を搬入する手段の確保を求める声が国際社会で高まっている。イスラエルが地上部隊による侵攻を始めれば、犠牲の拡大は必至で、人道危機への懸念が強まっている。

アラブ連盟がイスラエルを批判

国連のグテレス事務総長は11日の記者会見で、イスラエル軍によるガザ空爆が続く中、パレスチナの避難民を保護する国連の拠点や病院、学校が「標的にされてはならない」と訴えた。国連によると、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスがイスラエルへの奇襲攻撃を始めた7日以降、国連職員計11人も死亡した。

中東諸国など22カ国・地域でつくるアラブ連盟は11日に開いた緊急外相会合で、イスラエルによるガザ封鎖を批判。封鎖を解除して食料や燃料などの支援物資の搬入を認めるよう要請した。

イスラエルによるガザ攻撃を巡って米欧は、イスラエルの「自衛権」を尊重する姿勢を強調してきた。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は11日、人道支援の重要性を指摘しつつも、パレスチナの住民を「人間の盾」にしているとハマスを非難。現時点ではイスラエル防衛のために「必要なものを確保することが大切だ」と語った。

自衛権は「戦時国際法に従って」

ただ、欧州ではイスラエルによる攻撃激化への懸念も強まっている。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は10日、「イスラエルは国際人道法(戦時国際法)に従って自衛権を行使しなければならない」と語り、ガザのパレスチナ住民に対する水や食料などの遮断は「国際法違反」との認識を示した。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長も11日の記者会見で、イスラエルに「情勢に適応した対応を求める」と述べ、過剰な攻撃で民間人の被害が拡大しないよう全力を挙げるよう求めた。

イスラエルのガラント国防相はガザ封鎖を宣言した9日、「われわれは『人間の顔をした獣』と戦っており、それにふさわしい行動をする」と述べた。特定集団を非人間化する名称で呼ぶことは「ジェノサイド(集団殺害)の兆候」だと、専門家の間で批判も出ている。

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