ソウル五輪でIOC会長は南北開催提案…外交文書

IOC会長だったアントニオ・サマランチ氏
IOC会長だったアントニオ・サマランチ氏

 【ソウル=桜井紀雄】1988年のソウル五輪をめぐり、当時のサマランチ国際オリンピック委員会(IOC)会長が、北朝鮮に南北分散開催を提案していた経緯が明らかになった。韓国外務省が31日に公開した外交文書を基に聯合ニュースが報じた。

 サマランチ氏は84年の訪韓時、一部種目の北朝鮮開催に否定的な韓国高官に対し、「北朝鮮は絶対に提案を受け入れないはずだ」とし、韓国は「検討する用意がある」程度に答えるだけでいいと助言したという。

 84年のロサンゼルス五輪をボイコットした社会主義国もソウル五輪に参加の意思はあるが、「障害は北朝鮮だ」と指摘。北朝鮮が自国での一部開催さえ拒めば「ソウルに来る口実ができる」と説明した。北朝鮮は提案を拒否し、当時のソ連を含む多くの社会主義国の参加につながった。

 一方、88年パラリンピックについては、韓国の理解不足からオーストラリア開催になる可能性があった。豪州が83年に開催意思を示した際、韓国は施設の不足などを挙げて開催権を豪州に譲ろうとした。だが、障害者保護などに関する国際的イメージにかかわるとの意見を受けて再検討し、韓国開催が決まったという。

 87年11月末に起きた大韓航空機爆破事件をめぐって当時の全斗煥(チョン・ドゥファン)政権が12月16日の大統領選までに実行犯の金賢姫(キム・ヒョンヒ)元工作員を韓国に移送させることにこだわった状況も明らかになった。

 金氏を拘束していたバーレーンに派遣された外務省次官補は「遅くとも(12月)15日までに(金氏が韓国に)到着するには、12日までにバーレーン側から引き渡し通知を受けなければならない」と本国に報告した。金氏の身柄は15日に韓国に引き渡され、全政権が政治的に利用しようとしたと指摘されてきた。

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