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 自動車産業が100年に1度の変革期を迎える中、欧州のメガサプライヤーは再編を繰り返し、電動化や自動運転など「CASE」への対応を早くから進めてきた。足元では欧州勢は電気自動車(EV)へのシフトを加速させている。ドイツのメガサプライヤーであるZFの日本法人、ゼット・エフ・ジャパン社長の多田直純氏に、変わるサプライチェーン(供給網)の展望を聞いた。(聞き手は星 正道=日本経済新聞社、久米 秀尚=日経クロステック/日経Automotive)

多田直純氏
多田直純氏
(写真:ゼット・エフ・ジャパン)
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アップルカーの報道が相次ぎました。率直な受け止めは。

 個別企業についてはコメントできない。ただ、新しいプレーヤーが出てくれば、ZFとしては個々の電動化へのソリューションを持っており、ワンストップで提供できる。個人的な見解としては大きな変革になると思う。クルマ自体の価値も変わり、サプライヤーのソリューションも変わってくるだろう。

欧州のメガサプライヤーはCASE対応で先手を打ってきました。ZFはどう競争優位性を築こうとしていますか。

 電動化が進むと、プラットフォーム(車台)の上にどういう機能を載せて、自動車メーカーごとにどう味付けするか、という方向に向かう。近い将来、コモディティーになっていく。これから重要になるのは、無線通信でソフトウエアを遠隔更新するOTA(Over The Air)だ。クルマの価値はソフトのアップデートで上がっていく。

 クルマはまるで携帯電話のようになる。我々はソフトのほか、高性能な中央制御コンピューター、そしてミドルウエアなどを準備する。そのようなソリューションを日本でも提供できるようにしようと社内で話している。

ソフト分野では自動車の関連データのビジネスに、どう対応しますか。

 ZFはトランスミッション以外にもダンパーやカメラなど色々手掛けている。様々なリアルタイムデータを扱える立場だ。どうデータを取得し、クラウドに上げるかを考えている。

 ただ、データ領域は、サプライヤー以外も多くのプレーヤーがひしめく。セキュリティーを強みとしたり、データ収集を得意としたり、それぞれ守備範囲が異なる。実際にクルマを動かす自動車メーカーの考え方もあり、そういう状況を踏まえてビジネスを考えなければならない。