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医療新世紀
からだ・こころナビ
2010.12.14

覚せい剤による障害改善 
抗生剤ミノサイクリンで

 覚せい剤の使用による幻覚症状や認知能力低下を、にきびの治療などに使われる抗生物質ミノサイクリンで抑えることができたとする報告が日米で相次いだ。両研究にかかわった橋本謙二千葉大教授(神経科学)は「これまでサルなどの動物実験では有望な結果が出ていたが、初めて人で有効性が示された。意義は大きい」と話している。
 国内では、同大大学院生の谷渕由布子医師(精神科)らが、まだ小学生だった12歳のころから覚せい剤を使い始めた17歳の女性に投与した。女性は覚せい剤使用をやめて7カ月経過しても、重い幻覚症状に悩まされ続け、覚せい剤による精神病性障害と診断された。20101214navi.gif
 抗精神病薬など複数の薬剤による治療を数カ月続けたが、目立った効果がなかったため、これらの薬剤に加えミノサイクリンを毎日朝夕2回、計100ミリグラム服用してもらった。2週間ほどで幻覚症状が和らぎ始め、3カ月後には客観的な病状の評価尺度の上でも大幅な改善がみられた。副作用もなかったという。
 米国ではエール大のチームが中心となり、10人の男女に覚せい剤とミノサイクリンもしくはプラセボ(偽薬)、偽薬とミノサイクリン、偽薬と偽薬といった4種類の組み合わせを、だれがどれを飲むか分からない形で服用してもらい比較した。
 覚せい剤と偽薬の組み合わせを飲んだ人は、気分が高揚したり、認知能力を測るテストでの反応速度が遅くなったりしたが、ミノサイクリンとの組み合わせを飲んだ人にこうした傾向は現れなかった。一方、また覚せい剤を使いたいという欲求があるかどうか、常習性の抑制効果の有無も調べたが、目立った効果は見られなかった。