皮膚や内臓諸臓器が硬化する原因不明の自己免疫疾患である。以前は、全身性進行性硬化症 Progressive systemic sclerosis (PSS)の呼称が用いられていたこともあったが、進行性の症例ばかりではなく、現在では、Systemic sclerosis (SSc)もしくは Sclerodermaの呼称が用いられる。Systemic sclerosisを和訳すると「全身性硬化症」となるため、この用語もしばしば用いられるが、現在では「全身性強皮症」の呼称が最も一般的と考えられる。「強皮症」の文字を含む疾病に「限局性強皮症(Morpheaモルフェア)」とよばれる皮膚疾患があるが、内科的に「強皮症」と言う場合は「全身性強皮症(又は全身性硬化症)」を指しMorpheaとは別疾患である。患者数は全国で41,000人あまりとされるが、この統計には多発筋炎/皮膚筋炎が含まれること、強皮症にはびまん皮膚硬化型と限局皮膚硬化型の2種の病型があり限局皮膚硬化型の患者は含まれていない可能性があること、また別疾患である限局性強皮症(Morphea)の症例が統計に組み込まれている例があるなど、実態把握が困難である。男女比は女性に多く、1:9とされている。
年余にわたって、皮膚・肺・消化管などの病変が進行していくことが多いが、この病態には血管病変、臓器(組織)の線維化、免疫異常が相互に影響していると考えられる。
疾患名 | ||
---|---|---|
全身性強皮症: Systemic sclerosis (SSc) | びまん皮膚硬化型: diffuse cutaneous (dcSSc) | 全身の皮膚や臓器の線維化・硬化、抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl70抗体)が検出される場合に多い |
限局皮膚硬化型: limited cutaneous (lcSSc) | 手指や顔面に限局した硬化、抗セントロメア抗体が検出される場合に多い | |
限局性強皮症: Morphea | * ここで扱う全身性強皮症に含まない |
全身性強皮症は、diffuse cutaneous SSc(びまん皮膚硬化型全身性強皮症:dcSSc)とlimited cutaneous SSc(限局皮膚硬化型全身性強皮症:lcSSc)とに分類される。limited cutaneous SScを限局性強皮症と訳している書物も多くみかけられるのでMorpheaと混同しないよう注意が必要である。lcSScはMorpheaとは異なる疾患であるが、どちらも「限局」と「強皮症」の文字が入るため混同されていることがある。dcSSc とlcSScの違いは、皮膚病変の拡がりの違いであり、lcSScが手指の病変のみで内臓病変を伴わないというわけではなく、心肺病変についてはむしろlcSScの方で頻度が高いといわれている。
皮膚組織の病理像の特徴として、病期初期には真皮層に浮腫性変化が観察される(浮腫期)。進行すると、真皮層の膠原繊維束が太くなり緊密化し、いわゆる硬化局面を形成する(硬化期)。硬化期を迎えた後、硬化局面が拡大進行していく例と、一旦硬化した局面が菲薄化し、萎縮してくる例(萎縮期)とに分かれる。
皮膚病変 | |
---|---|
皮膚の硬化 | 皮膚の硬化度はスキンスコア(別に掲載する)を用いる。当科では、皮膚硬度を客観的に測定できるVesmeterを開発し研究を行っている。手指の関節のしわが硬く深くなったりする。 |
レイノー症状 | 寒冷刺激や感情変化により手指の血管攣縮がおこり、色調が白色→青紫色→赤色と変化する。SLEや混合性結合組織病、シェーグレン症候群などでもしばしば観察される。色調の変化は一見してそれとわかるほどに明瞭である。 |
可動域制限 | 皮膚硬化のため可動域制限がみられる。顔面の皮膚硬化は「仮面様」となり開口障害を示す。手指関節のみならず、肘、肩関節といった大関節も可動域が減少し生活動作に支障をきたす。 |
皮膚の色素沈着 | 皮膚硬化局面では色素沈着が進行し褐色の外観を呈するようになるが、時間が経過すると褐色局面の中に色素脱失局面が散在したまだらの外観になる。 |
爪上皮内出血点 | 爪の生え際をルーペで拡大すると黒褐色の微細な点を認めることがある。上皮部分でUターンする微小血管の出血である。末梢血管の異常を示す兆候で強皮症に特異的ではない。 |
指末節の萎縮 | 指の末節は萎縮しペンシル状に先細りになる例や末節自体が短縮することがある。爪上皮は末梢側に伸び(爪上皮の延長)、きわめて短い長さの爪になることがある。 |
指尖部瘢痕 | 血行障害に伴い指尖部には中央の窪んだ痂皮や、指尖部陥凹性瘢痕が観察されることがある。(pitting scar) |
消化器病変 | |
舌小帯の短縮 | 舌裏面の垂直方向の靭帯である舌小帯の短縮が起こり、歯列より舌を前方に挙出できなくなる。 |
食道病変 | 壁の硬化に伴って食道収縮能を喪失する。特に下部食道は内腔が拡張し、食道造影では大根状の先細り陰影を見る。 |
下部消化管病変 | 蠕動運動が低下し、残渣の停滞、異常ガスの発生、吸収障害を起こしてくる。 |
肺・心臓病変 | |
間質性肺炎 | 両側下肺野から進行する肺組織の線維化をみとめ、肺の伸展性が低下する。 |
肺高血圧症 | 肺の細動脈において血管内皮の増殖と内腔の狭小化がおこり、血流量が低下する。右心系は肺循環を維持するために高圧で血液を押し出す必要が生じ、右心肥大、右心不全があらわれる。肺血管の攣縮は悪化要因である。 |
心病変 | 心筋内に線維化が波及し伝導障害をおこすと、不整脈や脚ブロックが発生する。また、心筋の線維化に伴い収縮不全や拡張不全から心不全が引き起こされる。心嚢液が認められることもある。 |
腎病変 | |
強皮症腎(腎クリーゼ) | 細小動脈の血管内皮増殖と内腔の狭小化が発生し、腎血流量が低下することから、血清レニン活性上昇と著しい高血圧、腎機能障害があらわれることがある。2-4週間で腎不全に進行する急速な腎機能障害の経過をとる。 |
CREST症候群 | |
皮下に多数の石灰沈着(calcinosis cutis)、レイノー現象(Raynaud phenomenon)、下部食道の拡張(esophageal dysmotility)、手指皮膚硬化(sclerodactyly)、毛細血管拡張症(telangiectasia)があわせてみられる場合、頭文字を組み合わせてCREST症候群と呼ばれる。 |
血清学的検査では、抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼV抗体のいずれかが検出されることが多い。強皮症腎の発症者では、抗RNAポリメラーゼV抗体の陽性者が多いと報告されている。抗トポイソメラーゼI抗体はdcSScで検出されることが多く、抗セントロメア抗体はlcSScで検出されることが多い。その他、抗Th/To抗体、抗U3RNP抗体も本症と関連することが報告されている。抗核抗体の染色型では、微細斑紋型(discrete specked)は抗セントロメア抗体の存在を示している。
間質性肺炎は胸部CT・呼吸機能(肺活量)・KL6値、肺高血圧症は心臓超音波・心臓カテーテル・BNP値、食道病変は食道造影・内視鏡、などの検査で、診断や評価が行われる。
大基準 | |
---|---|
手指あるいは足指を超える皮膚硬化 | |
小基準 | |
1) | 手指あるいは足指に限局する皮膚硬化 |
2) | 手指先端の陥凹性瘢痕あるいは指腹の萎縮 |
3) | 肺基底部の線維症(両側性) |
4) | 抗トポイソメラーゼ抗体(抗Scl70抗体)、抗セントロメア抗体 |
項目 | score | |
---|---|---|
1. | 両手指のMCP関節より近位の皮膚硬化 | 9 |
2. | 手指の皮膚硬化:腫れぼったい指(2点)、PIPからMCPまでの皮膚硬化(4点)(高得点をカウント) | 2または4 |
3. | 指尖部病変:指尖部潰瘍(2点)、指尖部陥凹瘢痕(3点)(高得点をカウント) | 2または3 |
4. | 毛細血管拡張症 | 2 |
5. | 爪郭部の毛細血管異常 | 2 |
6. | 肺動脈性肺高血圧症、および/もしくは間質性肺疾患 | 2 |
7. | レイノー現象 | 3 |
8. | 抗セントロメア抗体、抗トポイソメラーゼI(Scl70)抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体 | 3 |
明らかな原因が特定されていないため各症状に対する対症療法が中心となる。SLEや皮膚筋炎などの他の膠原病と異なり、ステロイドの全身性強皮症への効果は限定的であるが中等量以下で使用されることも多い。本邦での全身性強皮症研究会議の治療指針ではステロイドの使用が記載されているが、ヨーロッパリウマチ学会の治療指針にはステロイドは記載されていない。
皮膚病変に対する免疫抑制剤としては、欧米において多施設でのランダム化比較試験で、Methotrexate (MTX)の皮膚硬化への治療効果が確認されている。しかしながら、MTXは有害事象として間質性肺炎を起こすことがあり、肺線維症の頻度が高い全身性強皮症患者への適応は一般には普及していない。肺線維症に対しては、免疫抑制薬であるシクロホスファミド clophosphamide (CPA)の有効性が報告されている。
肺動脈性肺高血圧症については、血管内皮増殖の抑制および血管狭窄に対する対応が治療となる。血管内皮増殖に対するステロイドや免疫抑制薬の効果が期待されるが、現時点では効果は限定的である。、血管拡張作用を有する薬剤として、プロスタグランジンI2製剤、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬などが使用される。強皮症腎の進展では、血中レニン・アルドステロンの濃度上昇と血圧上昇、次いで血圧上昇による腎障害進展といった悪循環が発生することから、強皮症腎に対してはアンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)、アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を用いた強力なレニン・アルドステロン系の抑制が必要である。
全身性強皮症では、レイノー現象や肺高血圧症など多彩な血行不良を伴う症状があり、血流保持のために寒冷暴露を避けるよう指導する必要がある。日本では、冬期の部屋単位での暖房が行われるため各部屋、廊下、脱衣所などの温度差に留意し、買い物時に冷蔵冷凍食品類をなるべく素手で持たないなど患者指導が必要である。夏季は冷房の強く効いている場所へは、近寄らないなどの注意も必要である。ストレッチを基本とするリハビリで手指の可動域を保つことも推奨されている。
全身性強皮症診療ガイドライン作成委員会によるもの。ガイドラインは、証拠(Evidence)とともに本邦専門家の意見を取り入れてあるが、100ページに及ぶためここでは推奨文章を中心にまとめた。全文は強皮症研究会議ホームページにて閲覧が可能である。
A: | 強い科学的根拠があり行うよう強く勧める |
B: | 科学的根拠があり行うよう勧める |
C1: | 科学的根拠はないが行うよう勧める。 |
C2: | 科学的根拠がなく行わないよう勧める。 |
D: | 無効あるいは害を示す科学的根拠があり行わないよう勧める |
modified Rodnan total skin thickness scoreは、皮膚硬化の半定量的評価に有用である | A |
ステロイド内服(初期量20-30mg/day)は発症早期で進行皮膚硬化例に有用である | B |
ステロイドは腎クリーゼのリスク因子となる。血圧と腎機能をモニターする | B |
シクロホスファミド(CYC)内服(1mg/kg/day)は皮膚硬化に考慮してよい。副作用に注意が必要 | B |
手指の屈曲伸展運動などのリハビリは手指拘縮の予防や改善に有用である | B |
皮膚硬化出現6年以内のdcSSc、急速な皮膚硬化の進行、触診にて浮腫性硬化が主体、の2項目以上がある場合を治療対象とする。 | C1 |
メトトレキサート(MTX)は皮膚硬化を改善させる傾向は認められているが、有用性は確立していない | C1 |
その他の薬剤で有用性の確立しているものはない。シクロスポリン(C1)、タクロリムス(C2)、アザチオプリン(C2)、MMF(C1)、IFNγ(C2)、IFNα(D)、ミノサイクリン(C2)、トラニラスト(C2)、イマチニブ(C1)、ビタミンD3(C1)、リツキシマブ(C1)、免疫グロブリン大量静注療法(C1) | |
長波紫外線療法は皮膚硬化の改善に有用の場合がある | C1 |
D-ペニシラミンは皮膚硬化を改善しない | C2 |
PAHのスクリーニングとして心臓ドップラーエコーが有用である | A |
PAHの診断には左心疾患、間質性肺疾患、慢性血栓塞栓症などに伴うPHの鑑別が必要である | A |
基礎療法として、酸素飽和度92%以上を維持するための酸素療法が推奨される | A |
ボセンタン、エポプロステノールは、おのおの単剤で、WHOクラスVに対し有用である | A |
PAHを有する妊婦死亡率は高く、避妊を指導する | A |
PAHのスクリーニングとして肺機能検査(DLcoの低下)、BNP・NT-proBNP測定が有用である | B |
抗セントロメア抗体、抗U1RNP抗体、lcSScがリスク因子となるためスクリーングが奨められる | B |
心臓ドップラーエコーでの、三尖弁逆流圧較差(TR-PG) 31mmHg(推定収縮期肺動脈圧36mmHg)が目安となるが、偽陽性、偽陰性の存在を念頭におく | B |
治療の結果の設定として、WHO機能分類、6分間歩行距離、血行動態(右房圧、肺血管抵抗、心係数)が有用である | B |
基礎療法として、凝固療法、右心不全徴候に対する利尿剤が推奨される | B |
シルデナフィル、タダラフィル、アンブリセンタンは、おのおの単剤で、WHOクラスU・Vに対し有用である。ボセンタンは、WHOクラスUに対し有用である | B |
エポプロステノールは、WHOクラスWに対し有用である | B |
ベラプロスト徐放薬は、単剤で、WHOクラスT・Uに対し有用である | C1 |
免疫抑制療法は、抗U1RNP抗体陽性かつ活動性のある重複症状を有する場合に、効果が期待できる | C1 |
上部消化管蠕動運動低下に、アルコールを控える、禁煙、食事を少量頻回にする、食後すぐ横にならない、などの生活習慣改善が有用である | A |
胃食道逆流症にプロトンポンプ阻害薬(PPI)を考慮してよい | A |
小腸・大腸の蠕動運動低下に、食事療法(便秘での水分摂取、高線維成分食品を避ける、吸収不良での低残渣食、脂溶性ビタミン、中鎖脂肪などの補充)を考慮しても良い | A |
胃腸機能調整薬(プリンペラン、ナウゼリン、ガスモチンなど)を嚥下障害、逆流性食道炎、腹部膨満、偽性腸閉塞などの消化管蠕動運動低下症状に考慮しても良い | B |
腸内細菌叢の異常増殖による吸収不良がある場合の抗菌薬の投与(広域スペクトラムのキノロン系やアモキシシリン、メトロニダゾールなど) | B |
上部消化管症状に六君子湯、小腸・大腸の蠕動運動低下にプリンペラン、ナウゼリン、大建中湯、パントテン酸 | C1 |
重症の小腸・大腸の蠕動運動低下に対して、在宅中心静脈栄養法を考慮 | C1 |
小腸・大腸の蠕動運動低下に胃腸機能調整薬が無効の場合、オクトレオチドの考慮 | C1 |
強皮症腎クリーゼの診断に、突然の悪性高血圧、急速な腎機能障害、血漿レニン活性値上昇が有用である | A |
診断後直ちにACE阻害薬にて高血圧を治療する | B |
重症度は血清クレアチニン値、蛋白尿の定性値により判定する | C1 |
MPO-ANCA 測定は顕微鏡的多発血管炎合併を鑑別する上で有用である。また、微小血管障害性溶血性貧血を合併した腎障害も鑑別すべきである | C1 |
心病変は心筋障害、伝導障害、心外膜炎、弁膜症(大動脈弁、僧房弁)があり、胸部X線、心電図、心エコー、心筋シンチ、心臓MRIなどで評価する | B |
心嚢液貯留に対して中等量ステロイドあるいは利尿薬、心筋障害に対してβブロッカー・ARB・Ca拮抗薬、不整脈に対して抗不整脈薬およびペースメーカー、弁膜症に対して心不全があればその治療または弁置換術を行う | C1 |
禁煙は血管病変に有用である | A |
Ca拮抗薬はレイノー現象に有用である | A |
プロスタグランジン注射製剤はレイノー現象と指趾尖潰瘍に対する治療に有用である | B |
ボセンタンは皮膚潰瘍新生予防に有用だが、肝障害の頻度や適応外使用から、適応は慎重に考慮する | B |
ベラプロストナトリウムはレイノー現象に対する治療として考慮してもよい | C1 |
シルデナフィルはレイノー現象の緩和に有用だが、適応外使用であり、適応を慎重に考慮する | C1 |
皮膚潰瘍・壊疽にトラフェルミン(フィブラスト)、プロスタグランジンE1軟膏(プロスタンディン軟膏)、白糖・ポビドンヨード配合軟膏、ブクラデシンナトリウム軟膏(アクトシン軟膏)は有用である | C1 |
スコア | 皮膚硬化 | 小さくつまみ上げる | 大きくつまみ上げる | 大きくつまみ上げた時の皮膚の厚み |
---|---|---|---|---|
0 | なし | できる | できる | 厚くない |
1 | 軽度 | できる | できる | 厚い |
2 | 中等度 | できない | できる | さらに厚い |
3 | 高度 | できない | できない |
腎クリーゼは全身性強皮症の重篤な合併症の一つであり、高血圧を伴い急性に腎不全をきたす。びまん皮膚硬化型全身性強皮症(dcSSc)の12%、限局皮膚硬化型全身性強皮症(lcSSc)の2%で発症との英国での報告がある。本邦では欧米より少なく5%と報告されている。正常血圧を呈する腎クリーゼが10%あるとの報告もある。溶血性貧血、血小板減少、軽度の蛋白尿や円柱を伴い、血栓性微小血管症の症状を呈することがある。全身性強皮症に対するステロイド投与、抗RNAポリメラーゼV抗体陽性は腎クリーゼのリスク因子と考えられており、これらの場合は血圧と腎機能を注意深くモニターする。血圧の自己測定が推奨され、急な血圧上昇の場合には本病態を疑う必要がある。
小弓状動脈、小葉間動脈内膜下や糸球体の内膜の増殖と肥厚により内腔の狭窄と閉塞を生じ、血栓性微小血管症の病理像となる。この像は血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)に類似する。
高血圧性緊急症(頭痛、悪心、意識障害)、心不全(呼吸困難)、腎不全の症状があらわれる。
びまん皮膚硬化型全身性強皮症 |
皮膚病変の急速な進行 |
4年未満の病期 |
抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性 |
新規の貧血 |
心嚢液貯留やうっ血性心不全などの新規の心イベント |
先行するステロイド投与 |
腎障害として、蛋白尿(2.5g/日以上の高度になることはまれ)、顕微鏡的血尿(5〜100/HPF)、血清クレアチニン上昇がみられる。血漿レニン活性は正常の30〜40倍と著しく上昇する。自己抗体では、抗RNAポリメラーゼIII抗体がリスク因子と考えられている。破砕赤血球を伴う微小血管性溶血性貧血(60%)、網状赤血球の増加、血小板減少(50%)がみられることがある。心筋への高血圧負荷、高レニン血症、腎障害による乏尿で容量負荷を伴い、うっ血性心不全(呼吸困難、肺水腫)、心室性不整脈、心嚢液貯留などをきたすことがある。血圧が落ち着けばこうした症状は改善する。
急速に進行する腎障害の鑑別として、顕微鏡的多発血管炎(炎症とMPO-ANCA陽性が特徴)、TTP(ADAMTS13活性低下)、d-ペニシラミンなどの薬剤性腎障害を鑑別する必要がある。
項目 | |
---|---|
1. | 眼底所 見KW IIIまたはIV |
2. | 痙攣 |
3. | 蛋白尿 |
4. | 血尿 |
5. | 微小血管性溶血性貧血 |
6. | 高窒素血症 |
7. | 高レニン血症 |
項目 |
---|
24時間を経て少なくとも2回、150/85mmHg以上の高血圧が新たに出現。 |
少なくとも30%以上のeGFRの低下を確認する。可能なら血清クレアチニンを繰り返し測定し確認する。 |
微小血管性溶血性貧血(血液塗抹) |
急性高血圧症に典型的な網膜症 |
尿中赤血球の新規出現 |
肺水腫の出現 |
乏尿あるいは無尿 |
腎生検による特徴的変化の確認 |
重症度 | 内容 | |
---|---|---|
0. | Normal | 正常 |
1. | Mild | Cr 0.9〜1.2mg/dl、または、尿蛋白1+〜2+ |
2. | Moderate | Cr 1.3〜2.9mg/dl、または、尿蛋白3+〜4+ |
3. | Severe | Cr 3mg/dl以上 |
4. | Very severe | 血液透析が必要 |
ACE阻害剤(captoprilとenalaprilに文献が多い)を投与、増量し早期に血圧コントロールする。高血圧性脳症や乳頭浮腫をきたしている場合はACE阻害剤の増量と並行してニトロプルシドあるいはペルジピン持続点滴、利尿などでて血圧降下をはかる。安定してきたら長時間作用型のACE阻害剤へ変更し継続する。腎機能が悪化した場合、人工透析の導入も考慮される。血栓性微小血管症が重篤な場合は、血漿交換も治療選択肢となる。
腎クリーゼに対して過去には両腎摘出術が行われていたこともあったが、1979年にACE阻害剤の有効例が報告されて以来、全身性強皮症腎クリーゼの予後は大きく改善された。1990〜2005年英国王立サセッックス病院の110例の報告では5年生存率59%。36%は人工透析不要だったが、23%の患者で一時的透析(透析期間1〜34月、平均11月)、41%は維持透析が必要となった。