親中派ニュースチャンネル、台湾が放映許可せず
「中天新聞台」 偏向報道理由か
【台北=中村裕】台湾の放送事業などを監督する国家通信放送委員会(NCC)は18日、親中派のテレビ局である中天電視に対し、同局のニュースチャンネルについて、今後は放映を許可しないと発表した。中国寄りの偏向報道が理由とみられる。報道の自由を侵害するとして同局は反発している。
対象は「中天新聞台」と呼ばれる、有名なニュースチャンネルの一つ。今後、放送に必要な免許を更新しないとした。現在の免許は12月11日まで。それ以降の放送ができなくなる。同局が放送するバラエティーなどの「総合台」や、ドラマなどの「娯楽台」の他2つのチャンネルについては、今後も放送を継続する。
台湾では、過去20年間で8つのチャンネルの放送許可が認められない事例があった。ただニュースチャンネルが対象になったのは今回が初めて。
中天電視は、処分を不服として法的措置を取ると発表した。中天電視は、台湾の大手財閥の一つである旺旺集団(ワンワングループ)が経営している。旺旺集団は、中国で米菓など食品事業を成功させたことで知られる。親中派の企業集団として有名で、同社が2009年に中天電視を買収し、テレビ局の運営を仕切ってきた。
こうした背景から、同局のテレビチャンネルは親中派とされ、放送内容も中国寄りであったとみられている。NCCは、同局のニュースづくりに旺旺集団が介入し、中国寄りの偏向報道が目立ったと見て、処分を決めたものとみられる。
台湾では昨年末、立法院(国会)で中国による介入を防ぐための「反浸透法」を可決、成立させた。台湾では、中国がネットやメディアを活用して情報工作を活発化させているとの警戒感が高まっており、今回の決定もそうした背景の中で決まったようだ。
一方、対中融和路線の野党・国民党は今回の処分について「台湾の報道の自由を著しく後退させる」と反発している。