波紋を広げる「大東亜戦争」表記 禁止されていないが問題視され陸自部隊はX投稿削除

当初の投稿から「大東亜戦争最大の激戦地」などの文言を削除した陸上自衛隊第32普通科連隊の8日の投稿。
当初の投稿から「大東亜戦争最大の激戦地」などの文言を削除した陸上自衛隊第32普通科連隊の8日の投稿。

木原稔防衛相は9日の記者会見で、陸上自衛隊の部隊が公式X(旧ツイッター)で3月末に日米合同慰霊式が執り行われた硫黄島(東京都小笠原村)を「大東亜戦争最大の激戦地」と表記したことについて、「硫黄島が激戦の地であった状況を表現するため、当時の呼称を用いた」と説明した。ただ「大東亜戦争」の表記は問題視される形で報じられ、同隊は削除した。木原氏は「現在一般に政府として公式文書で使用していないことを踏まえ、修正した」と述べるにとどめた。

問題視するメディア

陸自第32普通科連隊(さいたま市)は5日、Xで3月30日に執り行われた日米合同慰霊式に同隊隊員が「旗衛隊」として参加したことを報告。「大東亜戦争最大の激戦地硫黄島において開催された日米硫黄島戦没者合同慰霊追悼顕彰式に参加しました」と書き込んだ。

その後、「大東亜戦争」の表記は「政府は公式文書では用いていない」「戦後、占領軍の命令で『大東亜戦争』は禁止された」「ネット上で『植民地統治や侵略を正当化する名称』『公機関が使ってはいけない』と波紋を呼んでいる」と一部で報じられる。同隊は8日に該当するXの投稿から「大東亜戦争」などの表記を削除した。

林芳正官房長官は8日の記者会見で、「大東亜戦争」を公文書で使用する適否を念頭に「いかなる用語を使用するかは文脈などによる。一概に答えることは困難だ」と述べるにとどめた。

禁じたGHQ指令は失効

先の大戦を巡っては、日米開戦直後の昭和16年12月12日、「大東亜戦争と呼称する」と閣議決定された一方、連合国軍総司令部(GHQ)は戦後、国家神道を廃する「神道指令」で「大東亜戦争」について「国家神道、軍国主義、過激な国家主義」とし、公文書での使用を禁じた経緯がある。

ただ、神道指令は27年の主権回復後、失効した。大東亜戦争の表記を禁じる根拠を失った形となる。先の大戦に関して閣議決定された名称は「大東亜戦争」以外になく、実際に政府も公文書への使用を禁じてはいない。

韓国の中央日報(電子版)も8日、日本の報道を引用する形で、「大東亜戦争」について「事実上タブー語として認識されている」と報じた。ハンギョレ紙(電子版)は9日、「大東亜戦争」について「日本の起こした戦争はアジアの植民地を解放するためのものという歪曲された意味を含んでいるため、日本でも使用がタブー視されている」と解説した。

同隊の問題視されたX投稿からは「大東亜戦争」の表記に加えて、「慎んで祖国のために尊い命をささげた日米双方の英霊のご冥福をお祈りします」と当初あった文言も削除されている。公式Xには「『大東亜戦争』だけでなく『慎んで祖国のために尊い命をささげた日米双方の英霊のご冥福をお祈りします』という文言までなぜ、削除されるのですか」といった書き込みや「(大東亜戦争の表記を)削除せざるを得なかった担当者の悔しさが見て取れる」といった書き込みがある。(奥原慎平)

「大東亜戦争」と呼ぼう 岡部伸

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