中国、有人宇宙船「神舟10号」打ち上げ成功 有人ドッキングへ
【北京=山田周平】中国政府は11日、内モンゴル自治区の酒泉衛星発射センターから有人宇宙船「神舟10号」を打ち上げ、予定の軌道に乗せることに成功した。2011年に打ち上げ済みの無人宇宙実験船「天宮1号」と有人ドッキングを行う。中国による有人ドッキングは12年6月に続き2回目。20年ごろの運用開始を目指す中国独自の宇宙ステーションの技術蓄積が狙いだ。
神舟10号は午後5時38分(日本時間同6時38分)、宇宙船専用の「長征2号F」ロケットで打ち上げられた。有人宇宙飛行としては5回目で、女性の王亜平氏(33)ら人民解放軍所属の飛行士3人が搭乗している。
習近平国家主席は発射センターを訪れ、打ち上げに先立ち「あなた方の任務は中華民族の宇宙への夢を載せていく」と3人を激励した。有人ドッキングの実績を持つ国は米ロに次ぎ3カ国目で、実験を重ねて技術面での追い上げを急ぐ。
今回の飛行期間は15日間で、昨年の1回目より2日長い。神舟10号と天宮1号はまず自動で有人ドッキングを1回、その後に飛行士による手動でもドッキングを1回実施。将来の宇宙ステーションには複数の出入り口があると想定し、天宮1号の周囲を回るなど複雑な飛行も実験する。
人間が長期間滞在できる宇宙ステーションには日米ロ欧州15カ国による国際宇宙ステーション(ISS)があるが、20年ごろ運用が終わる。中国が入れ替わりで運用に入れば、宇宙開発の勢力図が変わりかねない。
中国の宇宙開発には国威発揚や、軍事転用できる技術を磨いて米国などをけん制する意図がある。年内には、無人探査機を月面に送る「嫦娥(じょうが)3号」を打ち上げる。探査機は地下100メートルまで土壌を調べ、一部を地球に持ち帰る。
12年末には、中国版の全地球測位システム(GPS)「北斗衛星導航系統」がアジア太平洋地域を対象に稼働。すでに中国以外にタイ、パキスタンなど5カ国が採用を決めた。米国が運用する既存のGPSと別の世界が広がりつつある。
中国では政府系研究機関や国有企業がロケットなど宇宙機器を開発・製造し、人民解放軍が打ち上げを統括する体制を敷く。公式の宇宙予算は年間2000億円規模とされるが、膨張する軍事費から多額の資金が回っている公算が大きい。
日米などは技術の軍事転用に警戒を強める。5月には、政府系研究機関の中国科学院が到達高度1万キロ以上の観測ロケットを打ち上げたと公表し、直後に米国防当局者が「衛星攻撃兵器(ASAT)開発のためのミサイル実験だった」と指摘した経緯がある。