Text & Interview By タカネ
ワンドロップキング、EXPRESSが4年ぶり、待望のアルバム『Signal E』をリリースした。メロディアスな節回しに、直球でポジティブなリリック。シーンの中での立ち位置を確立した今だからこそ、歌える歌がある。やりたいことがある。
●まずアルバムタイトル『Signal E』なんですけども、これはどういった意味があるのでしょうか?
EXPRESS:あまり深い意味はないんですけど、「E」にはEXPRESSの「E」という意味があります。EXPRESSから送るシグナル(メッセージ)的な感じで決めました。
●なるほど。このアルバムはタイトルをつけてからそのアルバムを作られたのか、それとも曲がたまってきてからアルバムにされたのかどういう形で製作されましたか?
EXPRESS:タイトルは製作の途中に決めました。前作から4年空いており、その間最初の2年は日本とジャマイカを行き来しながら製作していました。帰国後EPの製作を始めたのですが、曲が増えてきたので自然とアルバムになっていった感じです。
●ジャマイカにはこの期間でどれくらい行かれたのですか?
EXPRESS:まず最初に4か月、次の年に半年くらい滞在しました。また行きたいんですけど、コロナで行けてないですね。
●コロナはかなり動きが制限されますからね。では、作品の話に移ります。1曲目の曲がインストなんですけど、これはどうやって決めたんですか?
EXPRESS:これは一番最後に選んだもので、プロデューサーのセレクトですね。作品全体をイメージしている感じで、ジャケットの雰囲気にも合わせました。
●ちなみに一番の推し曲や思い入れのある曲ってありますか?
EXPRESS:1番の推しという話ではないですが、今回は、レゲエじだけじゃなく、HIPHOPやR&Bのオケに載せた曲もあります。自分はミディアムの曲を求められていると思うので、色んなタイプのミディアムができた方がいいと思って、色々なタイプの曲に挑戦しました。それが自分の新しいスタイルになっているので、気にいってもらえると有り難いと思います。
●今、ミディアムを求められているとおっしゃったんですけど、それは『もぐらの唄』とつながるところがありますか?
EXPRESS:めちゃくちゃありますね。実は『もぐらの唄』をリリースする前はダンスホールの曲メインに唄っていたんです。でももぐらの唄以降は他のレーベルからの誘いも増え、ミディアムを求められることが多くなりました。
●そのミディアムを求められる中で、新しいものを模索する形の一つとしてHIPHOPやR&Bのオケに乗せたものを作られたんですね。
EXPRESS:プロデューサーの力が大きいですね。彼はレゲエ、HIPHOPのバックグラウンドもありますし、自分のスタイルを理解した上でいろいろな提案をくれます。
●EXPRESSさん自身は普段はどういう曲を聴いているんですか?
EXPRESS:基本はレゲエやダンスホールのミックスを聴いてますね。自分から掘って聴くほどではないですが、HIPHOPもプロデューサーが教えてくれたりで良く聴きます。
●趣味とかはないんですか?
EXPRESS:それがないんですよね。曲づくりが趣味かもしれないです。アルバム作成の2年間はずっと家とスタジオの往復でした。
●曲づくりが趣味になっている人がアーティストとして残るんですね。2曲目の「Rolling Stone」はどういった曲ですか?
EXPRESS:これからとこれまでの自分の気持ちを伝えている感じですね。
●そこから「Rudebwoy Town」という曲に移りますが、、、
EXPRESS:ジャマイカのことを歌っています。今回3枚目のアルバムなのですが、毎回ワンドロップの曲を収録していて、その1曲になります。
●EXPRESSさんにとってやっぱりジャマイカって特別な場所ですか?
EXPRESS:ニューヨークやジャマイカは行ったことあるんですけど、ジャマイカがフィットしているなって思います。
●次の「約束」は、亡くなってしまった人への思いが描かれている曲だと思うのですが、特定の誰かを想定されていたりしますか?
EXPRESS:地元のツレなんですが、1人じゃなくて2人を想定して書きました。久々に同窓会で再会したあちすぐに亡くなってしまうことがあり、その友人たちの為に夢を叶えるという思いも込めて作りました。
●次曲が、今回唯一のコンビ曲、「Familiy a Family」という曲で、SHOWGAさんを迎えているわけですが、今回のアルバムはフューチャリングを少なく行こうという想定のもとで製作を行ったのですか?
EXPRESS:今回の製作は一人でスタジオに籠っていたので結果的に少なくなっただけですね。SHOWGAに関してはレーベルのteam blockaにて本当にファミリーのような感じでやっているので、参加してもらいました。
●SHOWGAさんとの出会いはいつですか?
EXPRESS:地元が大阪の茨木で一緒なんです。10年くらい前から知っていて、当時彼はセレクターでした。一緒にやるようになったのは、ここ3、4年前からです。めちゃくちゃセンスがあるので刺激をもらいますね。
●では、次の曲、「笑う門には福来る」はどういうマインドで作られたんですか?タイトルがユニークですよね。
EXPRESS:タイトルは後付けで、「笑い」をテーマに曲を作りました。最後にタイトルをつける時に、「笑う門には福来る」がハマると思い、3番にその言葉に関係するリリックを書き足しました。
●この曲は本当にEXPRESSさんらしい、飾らない言葉で真っ直ぐに前向きな気分にしてくれる曲だと思います。次のskitの「Money」はどういう曲ですか? ギラギラしている雰囲気が感じられます。
EXPRESS:ワンドロップ同様でオールドディージェイスタイルの曲も必ずアルバムに入れるようにしています。これは今回のアルバムのその位置付けの曲です。skitなので好きにやっている遊びの部分ですね。「もぐらの唄」を聴いている人からすれば、少し下品に聞こえるかもしれませんが、それを面白く表現したいなと思って作りました。
●次の「Ninja Sword」ですが、これは忍者が持っている剣のことですか?
EXPRESS:そうですね。アルバムにはミディアムだけではなく現行のダンスホールの曲も入れたいと思っていたので、自分の要望で制作したダンスホールチューンです。
●「サムライ」や「ハラキリ」といったような、アメリカやジャマイカの間違った日本人観がすごくよく表現されていると思いました。「あっちでは日本人ってこう言うイメージでしょ?」っていうのをEXPRESSさんが、上手に逆輸入して、逆手に取った上で歌っているのが、面白かったです。この曲のインスピレーションはどこから生まれたんですか?
EXPRESS:先に「Ninja Sword」という言葉が出てきて、そこから忍者に関わる言葉を掘っていきましたね。ジャパニーズテイストな言葉も足したりしながら作っていきました。あらゆる言葉が出尽くしているので、新しい言葉を探して入れていくのが大変な作業になってきていますね。どれだけ新しい言葉、フロウを探してそれを組み込んでいくかが自分の挑戦になっています。
●確かにフロウも出尽くしてますもんね。今の若手のアーティストはフロウの使い方も巧みですし。
EXPRESS:そうですね。やはり自分としては、一番こだわっているのはメロディなんです。海外の曲にしても、歌詞がわからなくてもかっこいいと思えるのはメロディですよね。坂本九の「上を向いて歩こう」が世界でヒットしたのも、やっぱりその響きが良かったからだと思うし。だからやっぱりメロディが大事なんだと思います。ちなみに僕はメロディから曲を作るタイプです。
●鼻歌で歌ってそこに歌詞をはめていく感じの作り方ですか?
EXPRESS:そうですね。耳ざわりを重視していますね。
●「50/50」はどういうマインドで作られた曲ですか?少しギャンブル的な要素も含んでいますが。
EXPRESS:ギャンブル的な要素にも掛けてますが、「どんな時も自分次第でどっちにでも転ぶよ」っていう曲ですね。
●「Holiday」はチルなイメージの曲ですよね。
EXPRESS:箸休めの力を抜いた曲を作ろうと思って制作しました。ドライブをしながらホリデイを楽しんでるイメージです。
●この曲はコロナ後とコロナ前でかなり曲の聴こえ方も変わってくると思います。実際コロナの影響で、活動の仕方が変わったりはありましたか?
EXPRESS:やはりお客さんを入れての対面のライブが減ってしまいましたね。ライブが減った分制作に集中できたのは良かった点ですが。オンラインのライブに関しては増えたのですがお客さんの反応が直接見えない分、今までの感覚とは違う部分が鍛えられますね。
●レゲエは現場の盛り上がりを重視するジャンルですもんね。次の曲が「戦う貴方へ」という曲ですね。
EXPRESS:これはジャマイカのGACHAがプロデュースしました。既にシングルとしてリリースしてたんですが、今回もう一度リリックを足して収録しました。
●ちなみにどこのリリックを加筆したんですか?
EXPRESS:「どれくらいの月日が流れ」で始まる3番ですね。ずっと3番が欲しいなと思っていたのでアルバム用に2021バージョンとして書き足しました。
●次に収録されている『交差点』はEXPRESSさんの代表曲ですよね。
EXPRESS:そうですね。もぐらの唄以降、ここ最近の僕の代表曲だと思います。この曲は必ず収録したいと思っていました。新しいバージョンにするか、そのままでいくか悩んだんですが、テンポをゆっくりにして新しく録り直して収録することにしました。
●次の「Untold Story」は新境地の曲ですよね。どんなテーマなんですか?
EXPRESS:大きく言えば「ラブアンドピース」ですね。SNSを見ていて、誹謗中傷で人が死んだりしている中でみんな力を合わせれば良い方向に進むよと感じ制作しました。
●4年ぶりのアルバムで、本当に待望のリリースだと思うんですが、今回はどういうマインドで製作しましたか?
EXPRESS:前より成長している部分を見てもらいたいというポジティブなマインドですね。ジャマイカも長期で行ったし良い意味での変化した自分を見てもらいたいです。
●前作からどういう風に変化し、成長しましたか?
EXPRESS:まず全体的に歌唱力が少し上がったかなと思います。ジャマイカに行って恥をかいた事もたくさんありましたが、学ぶこともたくさんありいろいろ経験値は上がってると感じます。後は言葉の詰め方ですね。周りのディージェイに刺激をもらって、シンプルに頑張ろうと思えましたね。
●今後のアーティストとしての展望はありますか?
EXPRESS:直近の目標で言えばこのアルバムを引っさげて全国をツアーして周りたいです。リリパもワンマンも考えていきたいと思っています。長期の目標で言えば、次のヒットチューンを作ることですね。
●ヒットするかどうかは、曲ができた時にわかるものなんですか?
EXPRESS:何がウケるかウケないかはわからないですね。だからこそたくさん曲を書けるのかもしれないです。みんなにとってこの歌いいなと思ってもらえる歌を増やしていきたいですね。
●最後にアルバムの聴きどころと、ザイオン読者にメッセージをお願いします。
EXPRESS:アルバム1枚の流れにも拘って制作したので、最初から最後まで一度通して聴いてもらって、そこからお気に入りの曲を見つけてもらえたらと思います。後は来年いろんなところにライブ行かせてもらえたらと思うので、皆さんの街に行った際はよろしくお願いします!