ニカラグア、台湾と断交 中国と国交を締結
【メキシコシティ=清水孝輔】中米ニカラグアの外務省は9日、外交関係を結ぶ台湾と断交して中国と国交を結ぶと発表した。台湾と外交関係を結ぶ国は世界で14カ国に減る。中南米では中国の影響力拡大を背景に台湾と断交する動きが相次いでおり、ニカラグアの決定は他の国にも影響する可能性がある。
9日付で台湾と断交した。ニカラグア外務省が同日に公表したプレスリリースで「ニカラグア政府は台湾と断交し、いかなる公式のコンタクトや関係を持つのをやめる」と表明した。「中華人民共和国が全ての中国を代表する唯一の正当な国だ。台湾は不可侵な中国の領土だ」とも述べた。
蔡英文(ツァイ・インウェン)政権が2016年に発足して以来、台湾はニカラグアを含めて8カ国と外交関係を失った。中南米・カリブ海地域では17年にパナマ、18年にエルサルバドルとドミニカ共和国が台湾と断交し、中国と国交を結んだ。
ニカラグアでは11月7日に実施された大統領選挙で現職のオルテガ氏が当選した。オルテガ氏は選挙前に有力な対抗馬を相次ぎ拘束するなど独裁色を強めており、米国や欧州との関係が悪化している。米国は6月にオルテガ氏の娘や中央銀行の総裁らに対する経済制裁を発表している。
一方で中国はニカラグアを含む中南米諸国との関係を深めてきた。インフラ投資など経済支援を進めるほか、新型コロナウイルスのワクチンを積極的に提供してきた。米国は中国の影響力拡大に危機感を抱き、関係が悪化するニカラグアに対しても国際的枠組み「COVAX(コバックス)」を通じてワクチンを提供している。
今後の焦点はホンジュラスの動向だ。11月28日の大統領選で当選を確実にした最大野党LIBREのシオマラ・カストロ氏は、選挙戦で台湾と断交する方針を表明した。だが投票直前に米国はホンジュラスに政府高官を派遣し、台湾と外交関係を維持するように働きかけた。
ホンジュラスの副大統領に就任する予定のサルバドル・ナスララ氏は選挙後、ロイター通信の取材に「台湾との関係を継続する。主要な貿易相手である米国と対立したくない」と述べた。カストロ氏自身は就任後の対中政策について言及していないが、米国の働きかけを受けて台湾との外交関係を巡る方針を見直している可能性がある。